久々に文庫本を手に取る。
ベッドサイドに並んだ本達。全部未読のものだ。
積読という文化に馴染んでしまったのは一体何時ごろからだっただろう。
読めそうだな、と思ったちょっと薄めの小説、『火花』。
孤独を感じた。とても寂しい小説だった。
創作者に通ずるところがあるからだろうか、胃が痛くなるほど苦しくなった。
陳腐な言葉で言えば、やり遂げる上での試練、みたいなものが淡々と書かれていたように思う。
読んでいるうちにお腹が空いていたことに気がつく。
ベッドから起き上がり、適当に湯を沸かした。
こういう時にすぐ食べられるものは便利だ。
目玉焼きを作り、パスタを茹で、スープを温める。
茹で上がったパスタに無印良品のパスタの素を和える。仕送りでもらったものだ。
お腹が空いている時、パスタをいつもたくさん茹でてしまう。何度も間違える。
今日も心なしか大飯パスタを一口。
濃厚なクリームがとろりと口の中で広がる。色々なチーズの混ざったソース。
卵を乗っけたのは正解だった。味わいがよりマイルドになった。
『火花』はやり遂げる小説だった。
主人公は、節々で試練に向き合っていた。
好きでやっていることだから。でも趣味じゃなくて、仕事だから。
私は仕事を知らない。
それに、何かをやり切る覚悟が私にあるかと言われれば、ない。
だってそもそも生まれたことを恨んでいる部類の人間なのだ。
死という逃げ道があるなんて根底から変えないと、どうにも覚悟なんか決まらない。
けれど、何かをやり切るには、それも好きなことで生きようとするなら、覚悟が必要だと、どの本にも書いてあるしみんな言ってる。
そうなのだろうか。本当にそうなのだろうか。
好きなことをやると決めたなら、批評は全部受け止めなければならないものなのだろうか。
好きなことをやっているから、多少の苦しみは我慢しなければならないのだろうか。
私は、別にそれは絶対条件じゃないと思うんだけど。
甘い、そういう考えで足を踏み入れてもらっては困る。
そんなことを言われてしまうかもしれないけど、私は好きなことをやって、なおかつ楽に生きていきたい。
そもそも好きを極めようとする生き方が、私にとっては楽だから選んでいる。選ぼうと思った。
だから、これ以上苦しみたくはないと思ってしまうのは、それは我儘なのだろうか。
空のお皿を持って立ち上がる。
やはり小説は心を動かしてくれる。
また気力があれば、ベッドサイドの本達を減らしていきたい。