ちょっとやる気のしない日。
朝ごはんを作ることすら面倒で、それでもお腹は空いたから、のそりと冷蔵庫を開けた。
昨日の仕送りのおかげで比較的埋まった冷蔵庫、その一番上の段に、黒々とした果実が二つ。そのうちの一つを手に取って、私はキッチンへ向かった。
「一番好きな果物は?」と聞かれたら、私はパイナップルかリンゴ、と答える。
この両者はかなり争っていて甲乙つけがたいのだ。
そしてこの時期になると、後者、リンゴが美味しくなってくる。
実家の仕送りの中に混ざっていたリンゴを真っ二つに切り分ける。
皮がかなり黒く、少し心配になって母に問い合わせたところ、『秋映』という品種のリンゴだということが分かった。
調べてみると、『秋映』はこのどす黒い色が特徴的らしい。そして生で食べるのが最適だと。
残った半分はラップで包み冷蔵庫にしまっておく。
大体リンゴを食べる時は皮を剥かない。そして切ることもない。そのまま齧り付く。
今日は全部食べきれる気がしなかったので、半分だけだ。
断面を上にしてかじってみれば、シャクリと固い触感。
何度か咀嚼すれば、酸味に隠れた控えめな甘さが顔を出す。
芯を避けつつ、パソコンの前でぼんやりとリンゴを食べ進めた。
平日の昼前に、こんな生活。
加えて今日はろくに何もできていなかった。罪悪感が襲ってくる。
諸事情で、今のところ私が頑張らなきゃいけない日は週に二日だけだ。
いや、だからこそ残りの五日間は自分で頑張らなければならないのだが。
ふと思う。
週五日、もっともっと働いている人がいて、お金を稼ぎ、きちんと自分の生活を賄っている。学生は毎日学校に通っていて。
それが、私には出来ない。
とどのつまり弱すぎると思うのだ。私自身の問題だった。
それに、体だけはずっと健康だった。ずっと、ずっと。
謙遜や自己嫌悪ではなく、私は怠惰で出来損ないだった。
それはどうしようもなくただの事実で、こんな私を私自身が嫌だと思ったりすることはない。
けれど、助けてほしいと、どこかでずっと思っている。
救ってはくれないか、と。
無くなってしまった果肉。
芯を生ごみに捨て、べたべたと汚れた口元を洗った。
食べたリンゴはエネルギーとなって、また私の体を生かし続ける。健康になっていく。
そうやって私は今まで生きてきた。生き抜けてしまっている。
美味しさや甘さなんて快楽は一瞬だけ私の心を生かし、すぐに消えてしまうというのに。
まあ、こんなことをのたまったところで、誰が助けてくれるわけでもない。
甘く酸っぱい林檎の季節。
積み重なる呪いで出来上がった私は、いつか私を救えたりするのだろうか。