食べ物と私

食べます。

心の贅沢はちみつナッツ

少し調子の良い朝。タイピングの音が心地よい。

普段ならあまり乗り気じゃない日のはず。

乾燥からか何なのか、少し喉も痛し、おまけに低気圧のせいか頭も痛い。

 

それでもなぜだろう。すがすがしい気持ちのまま、頭は澄んでいた。

もしかしたら秋の涼しさに喚起されたのかもしれない。

 

時間になり、いつも通りキッチンに立つ。

コンロは付属ではなく、自分で持ち込むタイプのマンション。

本当は二口コンロが欲しかったのだが、台所の大きさを考えると一口コンロで限界だった。

いっぺんに火を使えないのは何かと不便だが、こればかりは仕方がない。

 

今日は卵を辞め、代わりにヤカンを火にかける。

気分のいい日、ちょっとリッチなトーストに、コーヒーが似合う日だと思った。

トースターを温めている間に、食パンにマーガリンを塗ってチーズを乗っける。

お湯はまだ沸かない。

 

束の間、手持ち無沙汰の時間。

ふと気になってシンクとその周辺、ステンレスを磨いてみる。知らない間に水垢が目立っていた。

目が悪いくせにパソコンを見る時しか眼鏡をかけていないから、気づかないことが多い。

見えない間に汚れが溜まっていくのは、多分良くないことなのだけど。

 

掃除と心は何かと結びつけられがちだが、特に水回りの掃除は精神に直結する、というような話を聞いたことがある。

確かに、特に私は必ず使うところだ。それに水回りの汚れはぬめぬめしていてかなり悪質なように感じる。

 

見えなくても、気づかなくても、そういった小さな不快感は心にまで積もるものなのだろうか。

 

そうこうしているうちに、ピー、というトースターの音に急かされる。

きちんと手を洗い、食パンを放り込んでから、こちらもぐつぐつと音を立て始めたヤカンを火から降ろし、一人分のコーヒーを淹れる。

 

焼き上がったパンに、はちみつナッツを飾り付ける。

温かさが似合う季節、ホットコーヒーを添えれば、本日の朝食。

 

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ナッツをつけたはちみつは、以前一度、白く凍ってしまったものだった。

温めてもやはり不可逆。ざらざらしたまま、ナッツと固まってしまっていた。

トーストの熱で溶けだすはちみつ。

普通のはちみつよりサラサラしたそれを、チーズと一緒に。色々な触感のナッツも香ばしい。

 

まったりとした、余裕のある味だ。

 

温かく、濃いコーヒーをゆるりと飲み込む。

こんな日を、やらなければいけないこと、行かなければいけない場所に費やすのは大変惜しい気もするが、こんな日だからこそ出来ることがあるのかもしれない。

 

お皿とコップを洗いに、キッチンに戻る。

そうだ、今日は家に帰ってもピカピカのシンクが待っている。

誤魔化しにしかならない、けど誤魔化すことは大事だ。

 

まだ澄んだ頭を持っていることを確認し、私は蛇口をひねるのだった。