食べ物と私

食べます。

名残惜しさにチョコレートパフェ

急遽予定の入った日。

出不精でぐうたらな私が急遽の予定を了承するのは、どうしても断れない時か、行きたい時だけだ。

そして今日は後者。楽しい日だ。

 

人の多い駅で待ち合わせ。

黒いキャップをかぶった彼女はいつも通り明るく、そして暗かった。

 

ペチャクチャ喋りながら予約していたカラオケ店を目指す。

店を間違っていても大丈夫なように、と冗談みたいな理由で15分前に入店したら、本当に店を間違えていた。

どこまでも私達である。

 

幸い無事に店は見つかり、個室で少し話した後、歌って歌って、歌う。

歌える曲じゃなくて歌いたい曲ばかり選ぶから、お互い採点はめちゃくちゃだ。

音楽は好きで、カラオケも、友達も好き。

どこまでも楽しい、心地のよい空間。

 

そんな時間の中でも、ふと我に返って、明日からの日常を考えてしまう。

いちいち落差が激しいのだ。本当に嫌になる。

 

その温度差に耐えられず。

別れるのが、日常に帰るのが惜しくて。

 

午後六時、私たちは喫茶店に入った。

初めて入る『イノダコーヒー』だ。

 

どこか古めかしいメニュー表を見ながら、一番安価なパフェ、チョコレートパフェを二つ、注文する。

あれだけ時間はあったのはずなのに、この我儘のような延長時間に、ちょっと込み入った話が来るのはなぜだろう。

 

閉店時間が近い店内。

それでも少し真剣に、話に興じている人が多いように感じた。

他のお客さんも私達と同じような事情だったりするのだろうか。

 

そんな中、すまし顔をして登場したチョコレートパフェ。

 

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パフェ特有のオシャレなスプーンでどろどろの甘さを掬う。

上に乗っかるのはもったりとした生クリーム。粘度の高いチョコレートソースに、濃いバニラアイス。

どこか異国感を感じさせるほど大胆で、あまい、それはそれはあまいパフェだった。

 

そんなどろどろを飲み込みながら、私は思っていることを話した。

彼女は聞いてくれた。少し申し訳なかった。

 

皆が皆、必死だと思うのだ。

だけど皆、自分以外の必死さを知らない。もちろん、私も。

理解してあげられない。どうにもならない。

結局は誰もが、ひとりで完結させるしかないのだと思う。

 

本当に、楽しいだけじゃいられないのはなぜだろう。

ここにいる全員、好きで生まれたわけじゃないのにね。

 

綺麗だったパフェは、食べ終える頃には無残な姿になっていた。見る影もない。

あまいまま全部飲み込んでしまう。

友達のパフェは半分以上、どろどろに溶けて残っていた。

 

何度か振り返りながら、待ち合わせた駅で友達と別れる。

 

外は暗闇。

細かい雨がただ、わずらわしかった。