コンビニのスイーツコーナーの前で、少し悩む。
なんだか新商品が多いような気がするのだ。
秋にはおいしい食べ物がたくさんあると個人的に思う。
中でもさつまいもに、栗、そしてかぼちゃ。
スイーツが充実してくるのだ。
食欲の秋。
というのは言い訳で、私は年中食べているのだが。
そして、もちろん旬という理由もあるのだろうが、甘いものが店頭に並び始めるわけは、きっともう一つ。
10月31日はハロウィンだ。
スイーツに飾られたジャックオランタンの視線をかいくぐり、私はちんまりと並んでいる、黄色いモンブランプリンを手に取ってレジへ向かった。
毎年ハロウィンが来ると、『コンビニたそがれ堂』を思い出す。
ある町にある、欲しいものがなんでもそろっているという不思議なコンビニ、たそがれ堂。そのコンビニにたどり着いた人たちの色々なお話が繰り広げられている、温かな小説だ。
シリーズとして何冊か出ているのだが、その中のひとつにハロウィンのお話があった。
シリーズを通してみて見ても、そのお話は飛びぬけて好きだ。
といいつつも詳しい部分はちょっと抜け落ちてしまっている。
それでもそのお話の主人公が、毎年ハロウィンにお母さんと一緒にモンブランを食べていたのが印象的で。
以来、ハロウィンにはモンブランに似た何かを探すようになってしまった。
家に着き、早速まあるいプラスチックの蓋を開ける。どうにか綺麗なままで持って帰ることが出来た。
そういえばこのプリンは毎年見かけるような気もするが、人気だったりするのだろうか。
スプーンをいれると、黄色からたちまち真っ白な生クリームがのぞいてくる。
あふれてくるカラメルソースを絡めて、一口。
ざらざらとしたかぼちゃのクリーム。下のプリンも、もってりと濃厚で、なんなら間の生クリームが一番軽い。
ずっしりとした、おいしいプリンだ。
100均に並ぶ仮装道具を「気が早いな」なんて眺めていたら、10月ももう下旬だった。
なんだか嫌になってしまう。
ハロウィンは特に祝うこともないので何もしない。
何もしないでいたのだが、モンブランのことを思い出す。ちょっと気になって、食べたいなと思ってしまう。
私にとってハロウィンは、そんな季節だ。
とは言え、SNSでも渋谷でもUSJでも皆楽しそうで、私も何かうずうずしてくる。
しかしそこはやっぱり私だった。その熱量は結局食に行きついて、かぼちゃタルトなるものも食べてみたい、作ってみたい気がずっとしている。
が、そう思い続けて早数年。重い腰は上がらない。
今年こそは、なんて表面的にそう思って、現実味のなさに笑ってしまう。
ハロウィンまで、あと11日。