朝ごはんを怠っていい日。
着る毛布でぐるぐるまきになりながら、パソコンに向かう。
昨日の私が少し頑張ってくれたおかげで、今日は少しの整理だけでなんとか済みそうだった。
例のごとく、ヘッドホンからはYouTubeのミックスリストが流れている。
最近はやたらと懐かしい曲が流れてくるようになった。
ある音楽、特にはまってしまい、それだけをリピートしていた時期がある音楽を聴くと、聴き始めた時期を一緒に思い出してしまう。
冷たい匂い。そういえば寒いあの時期に出た曲だっけ。
あ、これは明るい電車の感じ。高校の通学の時によく聴いてたっけ。
そんなことを思うたび、音に記憶を隠してるようで、少し嬉しくなる。
寄り道する思考に小さく笑いながら作業を続け、そして完了。腰を上げた。
さて、何を食べよう。
冷蔵庫を思い返してみる。
ハムとチーズ。これは絶対食べたい。問題はそろそろ食べてしまわなければいけないレタス。
無難に考えればお得意のサンドイッチになるのだろうが、レタスとハムがあるからといって安直にサンドイッチを作るのは、何というか芸がない。食べさせられている感じだ。
それに、やはり寒いのだ。ここは温かい食事がいいのかもしれない。
さっそく冷蔵庫からバター、ハム、チーズ、それに卵と牛乳を取り出す。
あたたかいパンと言えば、ホットサンドメーカーがほしいな、と思いつつもう五年は経っているだろうか。
金欠度合いを鑑みても、今年もきっと難しいだろう。
苦笑いしつつ、適当にパンに切り込みを入れ、チーズとハムをはさんだ。
ハムは四枚入り。少し多いと思って……いや、単に食べたくて一枚、つまみ食い。
あとは卵と牛乳、砂糖を混ぜ、クリーム色の海に食パンを浸す。
卵液が浸透するのを待っている間に、心配事だったレタスをむしゃむしゃと平らげてしまう。
バターをひいたフライパンでパンを焼き、はちみつをかければ、おかず系フレンチトーストの完成だ。
スプーンでどうにか切ってみたが、ギザギザになってしまった。
ホットサンドメーカーと同様、ナイフもあいにく家にはない。
ナイフはあれば便利だろうが、わざわざ買わない物ランキング上位に食い込む気がする。
はちみつにまみれたスプーンで、黄色の幸せを一口。
はちみつとチーズの、とろとろとしたあまさとしょっぱさ。
三枚分、厚みのあるハムも食べ応えがあって嬉しい。
色々な美味さに踊る舌を、一杯分のコーヒーが落ちつけてくれた。
ぺろりと平らげてしまえば、食べる前よりもいくらか体が動きやすくなったように感じる。ごはんを食べると体があたたかくなる。
当たり前なのかもしれないが、どうやら空腹は寒さの味方らしい。
バキバキとなる体で一度大きく伸びをして立ち上がりつつ、着ていた毛布を脱ぐ。
部屋にこもる少し冷たい空気が、頬に心地よかた。