余力を7%残して帰ってきた日。
床に寝転んでしまう前に、脳を殺してキッチンに立つ。
不摂生な今日、そしてどうせ忙しい明日に向けて、作っておきたいものがあるのだ。
キャベツを二分の一、にんじん一本、玉ねぎ半玉、冷凍キノコと、冷凍の鶏肉。
これが今日の主役たちである。
とりあえずこれらを適当な、本当に適当な大きさに切り分け、鍋に敷き詰めていく。
まずはキャベツ。切った半分を入れたところでやめにして、塩を振る。
次に玉ねぎ、にんじん。キャベツが見えなくなって塩を振る。
さらに冷凍キノコ、その上からまたキャベツ。
もう鍋はパンパン。蓋をのっけるように被せて、極弱火。
放置すれば、無水スープの完成だ。
野菜の重ね煮。無水スープ。
明確な名前は分からないが、このレジピを初めて知ったのは多分Twitterだったと思う。
以来、毎年冬になるとこれが大活躍する。
あれだけ鍋から溢れていたのに、じわりじわりと低くなるかさに、最後、鶏肉と残りのキャベツをまたたんまりと加える。
この浮いている蓋が閉まれば、完成だ。
この調理法は正直、効率が悪いのかもしれないとも思う。
弱火でじっくり煮るから単純に時間もかかるし、本当ならもう少しお腹を満たしてくれるはずの野菜たちもしんなりして、無力になってしまう。
それでも、なんだかやめられない。無水という響きが魅力的なのだろうか。
なんというか、旨味がぎゅっと詰まっている感じがするのだ。
野菜本来の力を引き出せている調理法であるような、そんな気がしている。
もちろん根拠などないから、本当のところは何も分からない。
けれどかなり温まるし、何より少し食べるだけで大量に野菜が摂取できる。
冬の救世主。この無水スープが私は大好きなのだ。
くつくつと音を立てる鍋を開けてやる。
ふわり、と美味しい湯気。
少し器にすくい、一口。
塩分は強いように思うが、野菜、とくににんじんが甘い。
キャベツはスープの旨味をたっぷり含み、それでいて口に入れた途端に溶けてしまうほどとろとろに煮上がっている。
しゃくしゃく触感のエノキも、塩こうじで漬け、冷凍していた鶏肉も、みんながみんないい味を出していた。
温かい冬。満腹の冬だ。
具材は決まったものがあるわけではないから、その時の好きなように調整できるのも、この料理のいいところである。
今回は鶏むね肉だったが、個人的には鶏のつみれもおすすめだ。
器によそった分を食べ終わり、片付けついでにもう一口分だけスープをよそってみる。
大きな鍋いっぱいにご飯があると、ついつい「これくらいいいか」と、追加で食べてしまう。
また寒くなる。
明日の分、残しておいてね。