久々にどこかに行こう。
そんな同居人の言葉で、何もない休日、少し都心に足を進めた。
なんで誘われたのか。何となく理解はしている。
理解しているだけでそこに乗るかは別問題だったが。
「どこか」の行先は私が決めるらしく、パフェかハンバーガーかで迷った挙句、近いからという理由でハンバーガー店を選択。
徒歩15分くらいだろうか。一見ハンバーガー屋さんとは分からない程、ちょっとおしゃれな建物が見えてくる。
『シェイクシャック』。私がずっと行ってみたかったハンバーガー屋さんだ。
例のごとくYouTubeで存在を知ったのだが、少し高いのと少し遠いので、ずっと手が出せないでいた。
どんな味か分からないので、とりあえず王道らしきハンバーガーとシェイクを頼んで、席に着く。
同居人は大きなハンバーガーを買っていたが、その値段に驚いたのか、マクドナルドで換算し始めた。
ごめん、と一言謝れば、そういうつもりじゃないと。
じゃあ、どういうつもりだったの?
なんて、ナンセンスな言葉は飲み込んで、「知ってるよ」。
なんだかよく分からない。
そんなことをしているうちに、注文時に手渡されたブザーが鳴る。
受け取り口へ取りに行けば、画面の中で何度もみたフォルム。
めちゃくちゃに美味しそうだ。
ちょっと健康っぽい色どりだな、と思いつつ、大口をあけてひとかじり。
そしてびっくり。肉の油がじゅわっと口内を満たした。
続いて濃厚なチーズの追撃、そこに入ってきたトマトが一旦サッパリさせてくれる。
パンはふわふわ、肉はじゅわほろ。
正直もう少しサンドイッチっぽいハンバーガーを予想していたのだが、思わぬジャンキーさ加減に、ちょっと嬉しくなってしまう。
そしてコーヒー味のシェイク。これが一番輝いていた。
何と言ってもひと吸いが重い。濃いミルクの中に、しっかりとコーヒーが香っている。
粒の細かいドロドロのシェイクだった。例えは悪いが、まるで泥パックみたいだ。
二つあわせてかなりのボリューム。
食べ進めていくうちに、空っぽだった胃はすぐに満たされてしまう。
それでもどうにか食べ終えて、向かいに座ってスマホをいじる同居人を見た。
口元を拭う。
もうお腹いっぱいだ。お腹がいっぱいなのだ。
それから店を出て、あてもなくふらついた。
会話のテンポが悪いことだけが確かだった。ズレた歩幅をなおそうとしていないのは、他でもない私で。
お腹がいっぱいのまま、計画性もなくカラオケに入る。
案の定、早々に持ち曲のなくなった同居人を置いて、私は歌を続けるのだった。