ミートボールスパゲティが食べたい。
そう思ってから、私の行動は早かった。
ミートボールスパゲティと言えば、かの有名なルパンの映画、『カリオストロの城』に出てくる次元とルパンが取り合うスパゲティなのだろうが、近年、私の中でそれに付随したもう一つの作品がミートボールスパゲティの代名詞になりつつある。
それが『ごほうびごはん』である。
これはOLの主人公が、毎週金曜日に自分のご褒美として、美味しいものを食べるというグルメ漫画だ。
一話完結でサクッと読めてしまうため、実は詳しく覚えていないところもある。
でも、確かいつかのお話で、主人公がカリオストロの再放送のために疲れた体でミートボールスパゲティを作る場面があったはずなのだ。
あとこれは本当にうろ覚えだが、ディズニーのわんわん物語でも、ミートボールスパゲティが出てきたような。
とにかく、ミートボールスパゲティは二次元の食べ物、というイメージがある。
食べ物にすら、私は現実逃避を求めているのだろうか。
玉ねぎとにんじんをみじん切りにして、ミンチと合わせ、出来上がったボールをフライパンに並べていく。
欲張って一つを大きく作りすぎてしまったのか、量がちょっと少なくなってしまった。
コロコロ、可愛いお肉を焼いていく。
ある程度焼けたら、そこにトマト缶を半分、ケチャップとコンソメ、そして中濃ソース。
レシピなんてろくに見ないから、いまだにミートソースの味付けがこれで合っているのかよく分からない。
けど、味見してみれば何となくそれっぽい。オッケーだ。
味付けに関しても材料に関しても、ミートボールスパゲティはひき肉をひき肉のままで作る、ミートソーススパゲティと実質変わらないような気がする。
ミートボールスパゲティの方が肉を丸くする、という手間がかかるだけだ。
それでも今、私はミートソースではなく、ミートボールスパゲティを食べたいのだ。
不思議な感覚だと思う。でもたぶん、私にとって大事な感覚。
ここで妥協せず、ミートボールを作ることで、きっと私が私らしくいられるのだろう。
とはいえ、たくさん食べられる状態でもなかったため、少量のパスタをゆで、和える。
いい色に染まった、画面と紙、その向こう側のごはん。
まずは大本命のミートボールを一つ。
卵も入れていないから、肉感がすごい。ともすればむせそうになってしまうトマト味を、ゆっくり噛んで飲み込む。
パスタも程よい味の濃さ。いい意味で想像どおりの味に仕上がった。
諸事情でお皿はボウルと、ちょっとアンビバレンスな感じはあるが、ミートボール欲にまみれた心は浄化された。
次に作る時は見た目も綺麗に、そうだ、パセリでも振ろうと、最後の一口を食べながらそう思うのだった。