妹との逃避行、二日目。
朝から何も食べないまま、妹ご所望のカフェに直行。私も引っ越してから初めて来た、『Eggs 'n Things』である。
ハワイ調の店内。やはり旅行先でも祖国が恋しくなるのか、外国人の家族がひと組、席についていた。
ここの大目玉はなんといっても、生クリームがこれでもか、とのせられた魅惑のパンケーキである。
本当に信じられないくらいの量が乗っかっている。
性懲りも無くまたYouTubeの話になるのだが、見ているチャンネルの方々がことごとくこのカフェを訪れていた。
引っ越す前からここのパンケーキが私の憧れだったのだ。
しかし。
「エッグベネディクトも食べたい」
妹の意見に深く頷く。
前回来た時、山盛りのパンケーキを平らげたのはよかった。また来たいな、と思ったことも。
ただ、ちらりと見えたしょっぱいメニュー。特に、食べたことのないエッグベネディクト。
強欲な私はそちらも非常に気になっていたのだ。
ところが、私は大の甘党である。
しかも期間限定に弱く、このお店のパンケーキは毎月と言っていいほど新作が出ている。
さらにさらに、推しの大好物はパンケーキなのだ。
いくら食べるのが好きだからと言っても、一品でかなりの量があるこのお店。
きっとご飯メニューを頼むことは叶わないのだろうなー、なんて思っていたのだが。
パンケーキが第一だがエッグベネディクトも食べたい妹と、エッグベネディクトが食べたいが、パンケーキの誘惑に勝てない私。
幸か不幸か互いの利益が見事に一致し、結局私がエッグベネディクト、妹がホイップ山盛りのパンケーキを頼むということになる。
朝ごはんには遅く、お昼には早い、曖昧な時間。
互いに楽しい緊張を感じつつ、少し大きめのグラスで水を飲む。
そして、到着した、大きな大きなプレート。
もう何年もパンケーキの誘惑に勝てなかった、エッグベネディクトだ。
悩んだが、サーモンとアボカドの味を選んだ。
少しナイフを入れれば、とろりと卵が弾けた。
そのまま少しはみ出しているサーモン、イングリッシュマフィンをナイフで切り分け、一口。
卵。濃厚な卵だ。
アボカドソースも相まって、なめらかな味に拍車がかかる。
久々に食べるサーモンも美味しい。
イングリッシュマフィンはこうやって食べるのか、と思いつつ顔を上げれば、口の端にクリームをつけてにやにやと笑う妹の姿。
どうやらお気に召したらしい。
取り皿にエッグベネディクトをひとつ分けて妹に差し出し、私はパンケーキを反対側から攻めていく。
甘くて、濃厚で、美味しい時間。
潤った心と満たされすぎたお腹を抱え、私と妹は観光へ繰り出したのだった。