目を開け、あまりの寒さに布団を引き上げる。
起きなければ……と、今日は思わなくてもいい。
にやにやしたままスマホに手を伸ばす。
このためにやるべきことは前日に終えていた。というか、昨日の0時からすでに始まっている。
今日は、他でもない、推しの誕生日なのだ。
このブログにも度々登場している推し。
沼に落ちたのは今年の一月くらいだっただろうか、もうすぐ一年になる。
それゆえ、私の中では今日がこの推しの初めての誕生日なわけで。
Twitterのタイムラインがイメージカラーであるオレンジ色に染まっていく。
どれを見ても心が満たされる。小説だってたんまりとある。
どうせ何も手につかなくなることは分かっていたので、今日は好きな事をする日にしてしまったのだ。
ちなみに、私も小説はどうにか間に合って、UP済みである。
ということで、起きてからずっと目についた小説をかたっぱしから読んでいたわけなのだが、昼過ぎ頃、さすがにお腹が減ってくる。
今日は何なら自分の誕生日より特別な日である。
コンビニや適当なご飯だと少々味気ない。
それに、沢山の絵に描かれた推しの好物、パンケーキ。
食べたくなってしまったのならもう仕方ないのだ。
ホットケーキミックスなど家にはないので、小麦粉とベーキングパウダー、たまごと牛乳、砂糖で適当にそれっぽいものを作る。
推しのために作っている訳ではない。食べるのは私なのに、自分のために作っているとは思えない程心は軽やかだった。
ちょっと緩い生地を何度か焼き、はちみつナッツ、そして冷蔵庫の奥から出てきた粉砂糖をかけてみる。ちなみに振るったりする道具は見つからなかった。
撮ってみれば随分と顔色の悪い、控えめなバースデー・パンケーキである。
これまたナイフすらも無い家なので、スプーンで無理やり切って、一口。
思いのほか触感は軽く、すいすいと食べられる。そこに香ばしいナッツと、とろとろに甘いはちみつが絡まって、普通に美味しい。
空っぽだったお腹に甘さを詰め込みつつ、推しのことを考える。
私の推しは、ちょっとチャラい見た目で怒りっぽい、それでも律儀で真面目、努力家で、ある意味寡黙な少年だ。
思えば、こうして文字と向き合いはじめたきっかけすらも彼である。
間違いなく私の人生に関わってきた存在。彼だけが救いだったことさえある。
聞く人が聞けば笑ったり、呆れたりするのかもしれないが、間違いなく推しは生きる力になり得る。本当に、かなり有難い存在である。
その推しの誕生日も残すところ四時間。
正直、これを書いている今だって気がそぞろだ。お皿を片付けようと席を立つ。
まだ見るものは残っている。
今日、この大事な日を、私は最後まで楽しみつくしてやろうと思うのだ。