午前九時、目を覚ます。
引き留めてくる布団をはがし、すぐさま上着を手に取った。
最近はますます冷え込みが激しくなってきたように感じる。
空腹、それでも食パンのない朝。
ここぞとばかりに私はずっしり重い袋を手にした。
『ごろっとグラノーラ』。
先日、妹が遠路はるばる運んできてくれたものだ。
コーンフレークやグラノーラは割と好きな食べ物の部類に入る。
特にコーンフレークについてはパフェに居てくれなければ絶対に満足できない。
家に常備している訳ではないが、時々無性に食べたくなるのだ。
食欲が酷かった中学時代、食パン一枚とおかずのついた朝ごはんに、コーンフレークやグラノーラをプラスして食べていた記憶がある。
今考えたら、朝から恐ろしい胃袋だ。
食べすぎだし、ちょっと恥ずかしい気持ちもあったが、収まらなかったのも事実だった。
しかもちゃんと三時間目にはお腹が鳴っていたのだ。成長期、恐るべし。
もっとも、中学時代これだけ食べていたのは心の充足のためでもあったと思う。
もっと小さい頃、小学生の時は朝がご飯だということだけで、パン派の私は酷くごねたりしていた。
何せ学校が嫌だったのだ。
食べるのが遅い私にとっては給食すら苦痛で。
それでもその頃から食べることだけは好きだったので、一日の楽しみは食、特に朝ごはんに全振りされていた。
その後、父親からの「食にうるさすぎる」という一言でちょっと改めたりもしてみたが、あの時はあの時で私は精一杯だったように思う。
いや、いつだって私は精一杯だ。きっと。
そして、当時のことを覚えているのだろう。
母は事あるごとにこのグラノーラを私に送ってくる。
季節ごとに変わる味。今のところお気に入りは春先に出るイチゴだ。
そして今回は、大豆。
寒い朝、跳ねないよう、少しだけ温めた牛乳にそっとグラノーラを注ぐ。
一口食べてみれば、かなり大豆が強い。グラノーラ、というよりきなこ!豆!という感じだ。主張が強い。
ザクザクとした食感も相まって、かなり食べ応えを感じる。
最後の楽しみ、甘くなった牛乳もほんのり温かくて嬉しい。
グラノーラの値段を知ったのも、一人暮らしを始めてからだった。
200円くらいのコーンフレークはともかく、自分でグラノーラを買ったことはまだない。
多分、これから先もコーンフレークで妥協して、グラノーラを買うことはないのだろう。
だから、このグラノーラは私にとって、延々と実家の味、ちょっと苦しいあの頃の味のままだ。
グラノーラのために買った低脂肪乳を冷蔵庫にしまい、まだまだずっしりと重たい袋を持ち上げる。
食パンかグラノーラか、どちらかで満足できるようになった私。
あと何度かは、この手っ取り早い朝を過ごせそうである。