スターバックスにて、休日の夕刻。外はもう暗い。
ガラス張りの店内にはパソコンとにらめっこしている人ばかりだ。
みんな仕事だろうか。
こんな時間なのに、本当にご苦労様だ。
かくいう私も、友達を待つまでの間、パソコンを開いている。
はたから見たら私も、仕事人間に見えたりするのだろうか。
今日も今日とてやる気が起きず、昼間に起きてきた自由人なのだが。
ちょっと人が多い中、二人席に一人で座っているので少しだけ気が引ける。
そんな中、ふとラインの通知が鳴る。
どうやら到着したらしく、私はいそいそとパソコンをリュックに仕舞った。
今日は月に一回の頻度で会っている友達と会う約束をしていたのだ。
用事を済ませた彼女は、限定のフラペチーノの片手に現れた。
それから少しだけ、触る程度に近況報告をする。
月一のペースで会っているだけでなく、彼女とは週一で通話もしている。
大体お互いの状況は把握しているつもりだが、話すことは止まない。
溜まるものはあるのだ。
夕飯時、そのままそこで食べても良かったのだろうが、お互い所持金も少なかったため、安くて満足できる『サイゼリヤ』に移動。
程よく込み合っている店内で、大きな小エビのサラダをシェアしようと持ち掛ける。
このサラダは美味しいのだ。
もちろんそれだけでは足らないので、カタカナだらけ、意味はよく分からないが美味しそうなパスタを注文する。
ちょっとオイリーな、しおっけの強いパスタ。
ほろほろの肉と香ばしいキノコ、食べ応えのあるベーコン。
麺類は早く食べなければ台無しになってしまう料理だが、それでもゆっくりと口へ運んでいく。
今回ばかりは食べることよりも話すことに口が忙しいのだ。
今置かれている自分の状況の事。
日常で何を考えていて、何に揺さぶられているか。
とりとめのない日々の中で何を憶えて、昔に何を置いてきたのか。
一貫していることは何か。救いとも言えない、それでも彩られることは何なのか。
和気あいあいとしたファミレスに相応な話から、まったくもってそぐわない話まで。
気が付けば三時間、まるで闇鍋のような会話を続けた。
彼女はどうなのだろう。
分からない。分からないが、私はこの時間が好きで、必要だ。
劣等感と自尊心の渦巻く環境を、一瞬だけ忘れられる。
そんな時間なのだ。
「えぐいほどうまい!!!」
いつも少しだけ淀んでいる私達の間に、そんなあどけない声が入り込んでくる。
今まで交わしていた会話を忘れて、思わず二人して噴き出してしまう。
色々な人がいる。本当に。
いつまでたっても私達も、きっとその中の一人でしかなくて。
それでもひょんなことから、巡り合せで幸せになれる一瞬もあるのだ。
「いっぱい食べて欲しいね」
そんなことを囁きながら、顔も見えない後ろの席の少年を思い、頬をほころばせるのだった。