これは少し前の話。
私はどうしても飲みたいものがあって自転車を走らせていた。
こちらからチェックしなくとも絶対にSNSで流れてくる、なんなら道ゆく人が片手にどんどん宣伝していく。
私のお目当ては、スターバックスの新作だ。
ところで、地元にはスターバックスが三件しかない。それも割と最近三件になった。
こちらでは一本の通りで五件は下らないというのに。
だから小さい頃、スターバックスは『隣の県にある女の人のマークの美味しいシェイクのお店』というような印象だった。
もちろん、お店の名前すら知らなかった頃の話だ。
しかし、その頃から記憶に残っているのならやはりスターバックスは美味しいのだろう。
それに対し、ここは本当に、コンビニより多いのではないか、というくらいスターバックスでありふれている。
だから有難いことに、新作にだって難なくありつけるのだ。しかも持ち帰りで。
可愛い店員さんとちょっとかわいいやり取りをしてから、冷たいスイーツを手にする。
「チョコレート ストロベリー フェスティブ フラペチーノ」。
ちなみに、これください、と注文した。
フラペチーノは不思議だ。
特に映える写真が撮れるわけでも、見返すわけでもないのに、絶対に写真を撮ってしまう。
私の写真フォルダには、きっと今もいつかの新作フラペチーノ達が眠っているのだろう。
近いうちに消してしまおうと思う。
紙になったストローでズッ、と固体か液体か怪しいものを吸い上げる。
途端、少し苦味のあるチョコレートに、いちごの果肉が口の中に飛び込んできた。
滑らかな生クリームと、酸味の効いた苺ソース。
正直このフラペチーノが何で構成されているのかは分からない。チョコと苺とクリーム、そして冷たいということしか情報を受け取れない。
何を飲んでいる(もしくは食べている)のか分からない。
けど、なんかめちゃめちゃに美味しい。
これがある意味かなり失礼な私のフラペチーノの感想である。
この新作はもう終わってしまったらしく、今はまた新しく美味しそうな新作が出ている。
寒いこの季節、寒さに弱い私。
それでもクリスマスに合わせたフラペチーノは、毎年どれもこれも美味しそうで、少し節約してまで食べたくなってしまうのだ。
ただ、やっぱりちょっと寒いから、欲を言うのなら新作のショートサイズが出てくれたら嬉しいな、なんて呟いてみる。
贅沢な幻想を抱きつつ、私は少しふにゃふにゃになったストローで、最後のチョコのかけらを吸おうと躍起になるのだった。