隅々まで見渡せるような空っぽの冷蔵庫を前に、私はとうとう買い物に行くことを決意した。
最近は忙しく、スーパーへ行くことさえままならなかった。
そのせいで冷蔵庫の女神、卵を数日切らしているという事態になってしまっていた。
生活が良くない証拠である。
ぐわんぐわんとカートたちが走り回るスーパーをどうにか生き抜き、白い卵と牛乳、キャベツをゲット。
その他もろもろを5円で買ったスーパーの袋に詰めつつ、オムライス食べたいなぁ、と、眠っていた気持ちが固まっていった。
一人暮らしを始めて、一番作った料理。
よく考えるとそれはオムライスなのかもしれない。
私がオムライス好き、ということももちろんあるのだが、オムライスは豪華に見えて材料費がとんでも無く安い。
本当に最悪で言えば、卵とケチャップ、ご飯だけで「もどき」は出来てしまう。
それでいて美味しいのだから、私はよく「もどき」を作っていた。
何か豪華で安くて満足できる、オムライス。
しかし、「本物」を作ろうとすると一変、オムライス作りは苦行になってしまう。
まず工程が多い。
玉ねぎを切って、いためて、ケチャップを入れて、ご飯を入れて。
しかもそのフライパンを一度洗ってから、別の器に卵を溶き、ふわふわな布団を作らなければならないのだ。
それも、ケチャップライスを覆うことができるほどの。
最初のうちは頑張っていたのだが、あまりのめんどくささに段々と私のオムライスは適当になってしまった。
しかし、今私が食べたいのは列記としたオムライスなのでたる。
ちょっとあの頃を思い出して、伸ばした卵の上にケチャップライスを乗せてみる。
最近はもっぱら卵で包むというより卵を乗せる適当に
そのままスライディングさせるようにお皿にオムライス未満を反転させるも、ものの見事に見事にぱっくりと卵の布団は割れてしまう。
あー、と、そこまで残念そうでもない声を上げながら、ケチャップで補正。
そのケチャップすら残り少なくてままならない。
あーあ。
ひどく下手っぴなオムライスだ。
落胆しつつ、一口。
味は悪くない。そりゃそうだ、変なものは入れていない。
でも中身はチキンのないケチャップライスだし、代わりに入っているにんじんも硬い。空腹を待てなかった証拠である。
到底「本物」とは言えない。取り急ぎのオムライスだ。
家で作れるという理由で今までは避けていたが、今度お店のオムライスを食べてみるのもいいかもしれない。
そんな上着な思考のまま、ボリボリと硬いニンジンを砕いていくのだった。