少し用事を終えた午前十時。
用事自体は九時半からだったのだが、思いのほか早く終わってしまった。
思えばこんなに朝早く外に出るのも久しぶりだった。
幸い天気もいい。このまま家に戻ってしまうのは何だかもったいない。
それに、朝食だってまだなのだ。
そして私にとってはほぼ未知の時間、モーニングタイムの開催中である。
少し遠回りにはなるが決心は固い。
背中にパソコンを背負ったまま、私はもはやお決まりになった『コメダ珈琲店』へと足を運んだ。
少し人の多い店内。さっそくブレンドコーヒーを注文する。
周知の事実かもしれないが、コメダコーヒーは午前11時までに飲み物を頼むと、無料でトーストが付いてくるのだ。
今日のお目当てはこれだった。
大きなカップに入ったブレンドコーヒーと共に運ばれてきたトーストは、とにかく分厚い。
選んだ卵ペーストと共に、大きな口を開けてがぶりと頂く。
途端、バターの味が口の中いっぱいに広がった。
味音痴の私でさえ分かる、家で使っているマーガリンとは全く違う。
美味しい。
そんな幸せな朝食を食べ終えて、しばらくパソコンと向き合う。
机の下にコンセントがあることは、この前学習済みである。
穏やかなBGMの流れる中、ちくたくと時は進み、脳には糖分が足りなくなってくる。
ひと段落着いたところで、もう一度重厚そうなメニューを開く。
何か甘いものが欲しい。
シロノワールも気になるが、ここは飲み物で。
その時、目に飛び込んできた文字がひとつ。
言葉の力は不思議だ。
期間限定や季節限定、など今だけ!と情報を示す言葉はもちろんだが、スペシャル、特別な、なんて枕詞をつけられてしまったら。
名前だけで惹かれてしまう。どうしても目が離せなくなってしまう。
ビジュアルからしても今の私にドンピシャだったので、早速注文。
果たして、やってきたのは生クリームの山だった。
それでも何となく漂ってくる高級感。さすがスペシャルだ。
ホットということで、少しおどおどしながら口をつける。
すると、ひやりと冷たい生クリームが唇に触る。求めていた甘さ一号。
続いて、砂糖もミルクもふんだんに使われた、甘い甘いコーヒーが口の中に広がり、さらに脳に響いていく。
疲れた頭に染みわたる、まさにスペシャルなコーヒー。
初めて頼んでみたが。これはどうやら当たりだったようだ。
頭だけでなく心も潤って、生クリームをあまい海に溶かしながら作業を続行する。
魅惑の言葉たち。たまにはその魔力に騙されるのも、悪くない。