先日に引き続き、食欲と共に、とうとう朝ごはんを作る気力も無くなってしまった。
これはまずい気もするが、全ては多忙が悪いのだ。仕方ない、とそう思うことにする。
というわけで、今日の朝ごはんは、昨日買ってきたロールパンである。
プレーンとマーガリン、そしてレーズンマーガリンの三種類があった中、私は迷わずレーズンマーガリンを手に取った。
レーズンは苦手な人が結構いる印象だが、私は小さい頃からレーズンが好きだった。
「ぶどうぱん」なんて名前にも惹かれていたのかもしれない。
とにかくレーズンを不味いと思ったことがないまま成長し、世間一般では割と嫌われる部類にいることを知ったのだ。
確かに言われてみれば、見た目も別に美味しそうでは無いし、食感も良くは無いのかもしれない。味も形容し難い。
しかし、ここまでレーズンが嫌われてしまう理由を、私はいまだ理解できずにいる。
眠気に支配されるまま、ロールパンを一口。
少しパサついた食感の中に、なめらかなマーガリンと甘いような酸っぱいような、レーズン。
特に何の感動もないまま、もさもさと貪る。
ちょっとロールパンに失礼なような気もした。
バター入りのロールパンを軽く焼いて食べ始めたのは、父だった。
父は食にこだわりを持っていたのではないかと、今更のようにそう思う。
特にパンにバターは欠かせなかったらしい。
父のトーストを焼き上げ、わざわざそこにバターを塗ってから食卓に持っていく母を、小さい頃から不思議に思っていた。
バターくらい自分で塗ればいいのに、と。
今も実はそう思っていたりするのだが、まだ母は父のトーストにバターを塗っているのだろうか。
今の私はそれすら知らない。
とにかく、父はバターが好きらしかった。
そしてバター入りのロールパンが出てきた時には、必ず少しだけトースターで焼いてから食べていた。
バターが溶けて美味しいのだと、父は教えてくれた。
真似して食べてみると、なるほど、こんがりと焼けた側面に対し、一口食べればジュワリとバターが溢れてくる。
今まで食べていたバターロールとはまるで別物だと思った。美味しい、と。
それから私もその食べ方を気に入り、バターロールパンを焼いて食べるようになった。
暖かくて、美味しくて。
それだけで満たされるものがあるのだから、十分だと思った。
しかし、そんなことを思いつつ、今私が口にしているのはパサパサのロールパンである。
不味いとは決して思わないが、やはり味気ない気もする。
早くオーブントースターが使えるくらい回復してくれればいい。
まるで他人事のようにそう思いながら、私はぬるい水を流し込むのだった。