食べ物と私

食べます。

仕方なしのロールパン

先日に引き続き、食欲と共に、とうとう朝ごはんを作る気力も無くなってしまった。

これはまずい気もするが、全ては多忙が悪いのだ。仕方ない、とそう思うことにする。

 

というわけで、今日の朝ごはんは、昨日買ってきたロールパンである。

 

f:id:zenryoku_shohi:20211215101047j:image

 

プレーンとマーガリン、そしてレーズンマーガリンの三種類があった中、私は迷わずレーズンマーガリンを手に取った。

 

レーズンは苦手な人が結構いる印象だが、私は小さい頃からレーズンが好きだった。

「ぶどうぱん」なんて名前にも惹かれていたのかもしれない。

 

とにかくレーズンを不味いと思ったことがないまま成長し、世間一般では割と嫌われる部類にいることを知ったのだ。

 

確かに言われてみれば、見た目も別に美味しそうでは無いし、食感も良くは無いのかもしれない。味も形容し難い。

 

しかし、ここまでレーズンが嫌われてしまう理由を、私はいまだ理解できずにいる。

 

眠気に支配されるまま、ロールパンを一口。

少しパサついた食感の中に、なめらかなマーガリンと甘いような酸っぱいような、レーズン。

特に何の感動もないまま、もさもさと貪る。

ちょっとロールパンに失礼なような気もした。

 

バター入りのロールパンを軽く焼いて食べ始めたのは、父だった。

 

父は食にこだわりを持っていたのではないかと、今更のようにそう思う。

特にパンにバターは欠かせなかったらしい。

 

父のトーストを焼き上げ、わざわざそこにバターを塗ってから食卓に持っていく母を、小さい頃から不思議に思っていた。

バターくらい自分で塗ればいいのに、と。

今も実はそう思っていたりするのだが、まだ母は父のトーストにバターを塗っているのだろうか。

今の私はそれすら知らない。

 

とにかく、父はバターが好きらしかった。

そしてバター入りのロールパンが出てきた時には、必ず少しだけトースターで焼いてから食べていた。

バターが溶けて美味しいのだと、父は教えてくれた。

 

真似して食べてみると、なるほど、こんがりと焼けた側面に対し、一口食べればジュワリとバターが溢れてくる。

今まで食べていたバターロールとはまるで別物だと思った。美味しい、と。

 

それから私もその食べ方を気に入り、バターロールパンを焼いて食べるようになった。

 

暖かくて、美味しくて。

それだけで満たされるものがあるのだから、十分だと思った。

 

しかし、そんなことを思いつつ、今私が口にしているのはパサパサのロールパンである。

不味いとは決して思わないが、やはり味気ない気もする。

 

早くオーブントースターが使えるくらい回復してくれればいい。

まるで他人事のようにそう思いながら、私はぬるい水を流し込むのだった。