目が覚めて数時間。
大好きな曲の歌詞を借りるなら、布団がじゃれてくるから起きられなかった。
時刻はもうとっくに12時を過ぎていた。
こんな日ばかりだと思う。
どうにかしなきゃな、とも。
最近は洗濯も掃除もろくに出来ていないのだ。
それでも雪が降るほど寒い中、エアコンが直に当たるベッドの上から、私は動けない。
揺蕩うように睡魔にやられそうになっていた。
思うに、私は一日稼働したらその同じ時間だけ休まないと、動けない性質をしているのだと思う。
そして二日前、私は激動の三日間を乗り切ったわけで。
だから今日動けないのは仕方ない……ことではあるのかもしれない。
週休2日が基本のこの日本において、私がどこまで通用するのかは知ったこっちゃないが。
そうこうしているうちに、同居人が目覚めてくる。
朝ごはんについて尋ねられたので、凍った食パンがあることを伝える。
ベッドと一体化している私を見兼ねて、同居人は食パンをトースターにかけてくれた。
やらせてばかりで申し訳ないので、冷蔵庫の卵をどうにかしてみようかと、ベッドの上でもがいてみるも、やはり抜け出せない。
ぼんやりと諦めることにする。
どうやら今からオンラインで用事があるらしく、パンが焼きあがると同時に、同居人はそそくさと自分の部屋に戻って行ってしまう。
残されたのはへにょへにょに溶けた私と、トースト一枚。
少し考えた後、ごそごそとやっとベッドを抜け出して、冷蔵庫からバター、そして戸棚のはちみつを取り出す。
せっかく焼いてくれたトースト。
私だけ豪勢に盛り付けるのも申し訳なかったが、まぁついでにそこも許してもらおう。
ふたつを惜しみなく塗れば、はちみつバタートーストの完成だ。
まだほんのりと温かいトーストをざくりと齧る。
僅かに感じられるバターのしょっぱさに、しかしそれを凌駕していくとろとろ、はちみつのあまさ。
何だか懐かしい味だな、と思って、幼い頃の給食を思い出す。
そういえば、はちみつとバターがセットになったものが時々出ていたような気がする。
飲み込みにくいと、みんなは嫌っていたコッペパンだったが、私は案外嫌いじゃなかった。
そんな思い出に浸りつつ、最後の一口まで食べ終えてしまう。
胃に何か物が入ればまた睡魔が襲ってくる。
あらがわずに布団に逆戻りしてしまうあたり、きっと今日もダメダメな日になってしまうのだろう。
そんな予見をしつつ、それでも体は動かない。
あーあ。もっとちゃんとできればなぁ。
そんなことを思いながらそっと目を閉じてしまう私を、放置されたままのお皿がじっと見ているのだった。