夜。ほぼ放心状態の夜。
目の前に並ぶのは昨日作った鍋スープと、先日も食べたバスクチーズケーキである。
今日はやらなければならないこともあったが、率直にサボって家にいた。
頭も体も重かったし、正直それどころでは無いのだ。
そう、今日から推しのイベントが始まったのだ。
何度か紹介しているが、私はあるリズムゲームに出てくるキャラクターにどハマりしている。
正確に言えば一番好きな推しのイベントでは無いのだが、その相棒のイベントなのだ。
もちろん、ガチャには両方登場するのだが。
というわけで、買ってきたのは推しの好物であるチーズケーキ。
どこかのサイドストーリーでコンビニのチーズケーキを褒めちぎっていたが、あれは絶対にローソンのバスチーズケーキだと、私は勝手にそう思っているのだ。
だから、ガチャを回す時にこのチーズケーキを買うのは毎度の恒例行事となっている。
まずはゲームのストーリーをたんまりと堪能し、余韻に揺さぶられながらスマホの前にチーズケーキを置いて、10連のボタンを押す。押す。押す。
その甲斐あってか、なんとか80連で推しとその相棒をゲットすることが出来た。
これで心配事はなくなった。
貯めていた石を溶かすことに、今更抵抗はない。
このチーズケーキは慰めの味ではなく、祝福のデザートとして楽しめそうだ。
そんなこんなで晩御飯。
昨日の残りの鍋を食べつつ、体を温める。心の方はすでに温まっていた。
鍋も二日目の方が美味しくなったりするのだろうか。何となく味が染みているような気がした。
そしてお楽しみのチーズケーキ。
この前のように値引きはされていないが、味に大差はない。
少しカラメルっぽいソースが、ねっとりと濃厚なチーズケーキによく合う。
きっと推しもこの美味しさに釣られてやって来てくれたに違いない。
とは言え、味を楽しむ間にも、ゲーム内で進んだストーリーのことで私の頭の中はいっぱいだ。
いつもシリアスな話ばかりを持ちかけてくる推しグループのストーリーが、今回は珍しくほのぼのとしていた。
あまいチーズケーキ笑食べながら、ぎゅっと詰まって可愛いとしか言えなくなった語彙を、少しずつほどいて感想を吐き出していく。
こうしている間だけが、酷く幸せであるように思える。
推しはどんな薬よりもよく効く精神安定剤なのだ。
もっとも、乱されることも大いにありはするのだが。
明日からの予定を考えつつ、少しげんなりとする。
でも、きっと大丈夫。あと一週間と少しは生きていける。
憂鬱なことは取っ払って、とりあえず、まだ始まったばかりのイベントを楽しむとしようと、私は心に誓うのだった。