特別お題「わたしの推し」
目を覚ます。午前10時。
私にとっては特別遅くも早くもない時間。
いつもより脳が覚醒していることを感じつつ、一時間ベッドで寝っ転がってみる。
YouTubeを見たり、ゲームのイベントを走ったり。
無理は禁物。焦る必要はない。
寒さと眠気にかまけ、最近はもっぱら一日中ベッドの上に居たのだが、そろそろ動かなければならないことは分かっていた。
それに、今日はなんだか行けそうな気がしたのだ。
適当なタイミングでむくりと起き上がる。
早朝に一度寒くて寝覚めてしまい、その時にエアコンをつけたおかげで部屋は暖かい。
とりあえず、久々に朝食を作ってみようと思う。
冷凍庫を覗くも、食パンを切らしていることを思い出す。
少し首をひねってから、小麦粉とベーキングパウダー、卵を冷蔵庫から取り出す。
今日の朝ごはんは、パンケーキに決まりだ。
ここ数日、本当に寝ているばかりだった。
そして起きている間は何をしていたかというと、ほぼゲームである。
以前も書いた通り、今は私のハマっているゲームで、ハマっている推しユニットのイベントが絶賛開催中なのである。
私はあまりイベントの上位を目指したりはしないのだが、それでもやはり他のイベントよりは力は入る。
ガチャ運にも恵まれたおかげで、何とか私の中ではまだ上位をキープ出来ている。
といっても、3万位以内なのだが。
そしてこれも何度も書いていることなのだが、私の推しはパンケーキ好きである。
なんでも幼少期、日曜の朝はホットケーキと決まっていたらしい。
この情報が判明したのは比較的最近なのだが、知った時は思わずにやついてしまった。
同時に、私の家でも時間のある日は朝食がホットケーキだったこと、あったよな、なんて思い出す。
確かに、その日の朝はワクワクしていたような気もするから、少しだけ推しの気持ちは分かるかもしれない。
そんなことを考えつつ、適当な分量で生地を作り、パンケーキを焼く。
推しには姉がいるのだが、その姉、いや、一家そろってパンケーキが好物なのだそうだ。
推しの家にはホットケーキミックスが常備されているのかもしれないが、私の家は残念ながらそんなものは無い。
結果、パンケーキは少し固めの、推しががっかりしそうな完成品となってしまった。
固さを誤魔化すように、たっぷりとはちみつをかけて食べる。
やはり、小麦粉の味が強い。ベーキングパウダーが少なかったのか、牛乳の代わりに水を使ったのが悪かったのか。おそらく全部だろう。
出来の悪いパンケーキを咀嚼しつつ、それでも「推しの好物を食べている」という事実に少し嬉しくなる。
しかも、今日は自分で朝食を作ることが出来たのだ。
さらにさらに、今は長期休み。
ここぞとばかりに私の爪は今、推しの色に染まっていた。
今年も残すところ数日。
一月頃からハマり始めたおかげで、今年が推しの色である、オレンジに染まっていたことは否めないだろう。
そしてそのオレンジ色に、私は生かされてきたのだ。
皿に残ったはちみつを掬い上げ、最後の一口を放り込む。
来年もきっと、彼は私の活力になってくれることだろう。