食べ物と私

食べます。

むしゃくしゃがっつりジャンクフード

美容院という場所は少し苦手である。

あまり人と触れ合いたくないという私の素質もあるのだろうが、いかんせんやりづらい時間が続く。

 

とは言え一年と少し前にブリーチをして、それからちゃんと手入れもされなかった私の、髪はいい加減傷みまくっていて。

 

今日はバッサリ髪を切り、気分転換ついでにパーマでもかけてしまおうという算段だったのだが。

 

頭が熱されている中、鏡越しに見える女の人が、美容師の人と大きな声で何かを喋っている。声色からして、良くない類の話だった。

どうやら息子の留学について、その学費について話していたようだった。

 

私がどれだけ削ってるんだか、馬鹿馬鹿しい。私に自由はないの?

女の人のそんな言葉に、まあまあと宥めるように美容師は笑った。それが本人のやりたいことなら良いですけどね、と。

しかし。

 

「でもそれ、途中で辞めたら……」

 

そんな美容院の碌でもない質問に、女の人は呆れたように大声で笑った。

 

「そりゃもう、殺してやろうかと思いますよ」

 

そんな言葉を背中で聞きつつ、学生である私はレポートの課題をこなすべく、ただじっとスマホの画面と向き合っていた。

 

熱いのは頭の外側のはずなのに、なぜかジリジリと内側も焼けてくるように熱い。

 

それぞれに事情はあるのだと思う。

女の人にも。その息子さんにも。

それは女の人にしか分からないことでもあり、息子さんにしか分からないことでもある。

 

しかし息子さんに決定権はなく、それが通ったとしてもチャンスは一度きり。失敗は許されない。

たとえ、やってみなければ分からないことであっても。

 

母親を経験したことのない私がこんなことを言っては、鼻で笑われるだけなのかも知れないが、それでも思わずには居られなかった。

 

じゃあ、なぜ。貴方は息子さんを産んだのか、と。

 

少し合わない話を聞いてしまった、と思いつつ、随分軽くなった髪、重くなった胸で帰宅する。

 

そして帰るなり、私は同居人に今日はウーバーイーツにしよう、と提案したのだった。

何だかたくさん食べたい気分だった。

それこそ、何かを壊してしまうほど。

 

数分後、到着したのは新た心におあつらえむきのジャンクな食事。

いつもは頼まないオレオフルーリーなんかもカゴに入れる始末だった。

 

f:id:zenryoku_shohi:20220105000334j:image

 

むしゃくしゃした気持ちを噛み砕くように、バーガーを一口。

ピリリと辛いソース。今の私にはちょうどいい刺激だった。そのままパクパクと無事Mサイズとなったポテトを食べ進めてしまう。

 

こういう食べ方は何となく食べ物に対して申し訳なくなるが、一方でジャンクフードの王道の食べ方のようにも思えて不思議だ。

 

とにかく、ジャンクフードは荒んだ私を許してくれるのだ。

 

ちょっと心が晴れるのを感じつつ、ぎゅるる、と良くない音を鳴らせ始めたお腹に、アイスは明日に残しておこうかな、と考えるのだった。