もう幾度目かの気の乗らない朝。
アラームで一応目を覚ますも、こういう日は大体寝不足だ。
夜は眠れないし、朝だってもう何度も起きている。
忙しくなることは分かっているのだから大人しく休めば良いものを、このポンコツな体はなかなか言うことを聞いてくれない。
憂鬱もここまでくれば半ば怒りに変わってくる。
途中目を覚ました時、エアコンを付けていたおかげで温かい部屋。
とりあえず耳にイヤホンを突っ込んで、諸々の支度をする。
最近聴いている曲に『から』というものがある。
メガテラ・ゼロさんの曲だ。
聴いていると少しだけ、こんな私でも少しだけ頑張ろうと思える。
私にとっては珍しい曲。友人Iから教えてもらった曲だ。
どうも私達は強い女の人に憧れている節がある。
自分がへなちょこであるからこその憧憬だ。
髪を切ってみたって、真っ赤なリップを塗ってみたって、そんな女の人には到底向かないのだけれど。
そんなへなちょこは今日という日すら乗り切れそうにないから、前日から準備を始めている。
いつものように、パンを一枚焼く。
今日はこれだけで朝食の完成なのだ。
焼き上がったトーストに、しめしめと冷蔵庫からたまごサラダを取り出す。
昨日の私からのプレゼント。
いわば今日の活力を少しでも残して、生き残るための工夫だ。
さく、とパンを齧れば、熱いトーストとは真逆のひんやりとしたたまごサラダがなめらかに口内を満たしていく。
意図せずマヨネーズを多めに加えたことが、功を奏したのかもしれない。
レモン汁を入れたからか、どこか爽やかな感じもする。
朝食を食べつつ、なおも動画を再生している私を客観的に見て、もうイヤホンとスマホ無しではきっと生きられないのだろうな、と思う。
イヤホンの充電が切れていた時なんて絶望的だ。
だからいつもヘッドホンとイヤホンの両方を持ち歩いているのだが。
トーストを食べ、お皿を洗い、本格的に準備へと取り掛かる。
行きたくない、行きたくないと駄々をこねる体を何とか叱咤すべく、再生するのは『紅蓮の弓矢』。
こちらは元気の出る曲、いや、謎の怒りのパワーを溜めて出動にぶつける曲である。
そんなに上手くはいかないが、一応自分も調査兵団の一員になった気持ちでこれからに臨んでみたりする。
色々なことを駆逐してしまいたいのは山々だが、そこだけは抑えて。
昨日の私と十数曲に支えられる朝。
沢山の力を借りて仕方なしに重い腰を上げるのだった。