人が作ったご飯を食べたい。
唐突にそんな衝動に駆られる。
一人暮らしをしたことがある人なら、誰もが一度経験していると思う。
普段は自分でのびのびと適当にご飯を作って食べている私だが、それでも「ちゃんとした」ご飯を食べたくなる時はある。
この「ちゃんとした」の定義はまちまちだろうが、私の場合は汁物とご飯とおかずが揃っていることである。
自分のためであれば二品が限界だし、他の人のために料理するのは、何だか自分までちゃんとしなければいけないみたいで嫌だ。
楽してちゃんとしたご飯が食べられる場所。
私は同居人を誘って、近くの「やよい軒」に足を運んだ。
小さい頃は定食屋に魅力を感じなかった。
家で食べられるものを外で食べる意味が分からなかったのだ。
我ながら無知だったと思う。
その頃の私に言ってあげたい。
今はファミレスのハンバーグやパフェが大好きな貴方も、「定食屋に行きたい」と思うようになる時が来るのよ、と。
ブログでさらしている通りなのだが、最近は碌なものを食べていない上に、一日二食が定着してきていた。
そのため、大体夜の十九時くらいになるとお腹はペコペコで、すっかり力が入らなくなっていたのだ。
お店に着き、食券を選ぶ。
食券式のお店はじっくりメニューを選べないから、優柔不断な私にとっては少し苦手だったりする。
それでも今日は沢山食べたい!という欲があったので、いつもなら躊躇するようなボリューム満点の定食を選ぶ。
実のところはカキフライ定食が食べたかったのだが、残念ながら売り切れていた。
気を取り直して席につき、待つこと数分。
やってきたお盆には沢山のおかずと、インパクトのあるチキン南蛮にエビフライ。そしてほかほかのご飯だ。
どれから食べようか迷いつつ、なぜか怖気付いて、一番小さな器に盛られたお漬物に箸を伸ばす。
しかし、ウォーミングアップのつもりが、びっくり。すぐにご飯を食べる。
そう、お漬物がめちゃくちゃご飯に合うのだ。
メインに行く前に既に感動してしまう。
一人暮らし。みんながそうとは言わないが、少なくとも私の家にお漬物など無い。
しかも、やよい軒ではこの二つがお代わりし放題というのだから、胃に限界さえなければ永遠とこの二つで居座ってしまうだろう。
そして本命、チキン南蛮とエビフライ。
チキン南蛮は甘酸っぱいタレと卵の面影を残すタルタルソースが良く合って、さくさくと食べ進められる。チキンはジューシー、エビなんかぷりっぷりだ。
その他にも豆腐にお味噌汁。
目を輝かせつつ黙々と食べ進め、満腹になったところで完食。
悔しいがお代わりはとてもじゃないけど無理だった。
お店を出て、冷たい夜風にあたる。
外の空気とは対照的にぽかぽかと温まった体で、美味しかった、と口にしつつまた我が家を目指すのだった。