食べ物と私

食べます。

気持ちひとつ、お高いプリン

「コンビニいるけど何か欲しいものある?」

 

そんな電話に、すぐさま甘いもの、と答える。

最近は晩ごはんを少なめにして夜食に甘味を食べる癖がついてしまった。

健康的にはちょっとまずいのかもしれないが、私が幸せならそれでいいのだ。

 

しかし、帰ってきた同居人が手にしていたものは、コンビニのものとは思えない紙袋。

 

渡されるまま中を開けると、瓶に入ったプリンが二つ。

駅のお店で見かけたことのあるプリンだった。

同居人いわく、千円するプリンだそう。

 

どうしたの、と聞くと、別に、と、返ってきた。

お金は、と聞くと、それもいいとのこと。

 

ケーキだったり何だりで、最近はなぜか同居人に奢ってもらうことが多い気がする。

前は私から言ったが、今日は同居人から買ってきてくれた。

 

一体何があったのか、と思う。

最近は色々と考えることをやめ、私が私自身に集中し始めたから、気をひこうとしているのだろうか。

 

何となく、小さい頃父が出張帰りに必ず土産を買ってきてくれていたことを思い出す。

今思えば、あれも父の心の片隅に家族があったからのことだ。

何かを買って帰ってあげようと、そう思う心は多分暖かいものなのだろう。

 

自分にはそれがあるだろうか、と少しだけ鑑みる。

少なくとも、同居人に対してはなくなってしまったかもしれないなんてことを思いつつ、若干の罪悪感に駆られる。

 

とはいえ、食べ物に罪はない。

 

大きく「俺」と書かれたプリンは、見た目からして他とは違う風格を放っていた。

同居人曰く、チョコプリンらしい。

 

f:id:zenryoku_shohi:20220201211745j:image

 

付属のスプーンで恐る恐る上の層を掬ってみる。

濃い茶っぽい色をしているから、コーヒーかな、なんて思って食べてみると、何だか思ってたのと違う味がする。

もう少し食べ進めると、ごろっとブルーベリーが出てくる。なるほど、ベリー系の層らしい。

 

次は縦に一気に食べてみる。

結構弾力のあるプリンだ。チョコと卵の風味がねっとりと口に広がっていく。

 

そして嬉しかったのは、下にあるカラメルソースが惜しみなく入っているところだ。

普通のプリンはカラメルが溢れ出したまま食べてしまえば先にカラメルソースがなくなってしまうのに、このプリンはついにカラメルだけが余ってしまった。

 

瓶の底まで隈なく食べて、一息つく。

結構ボリュームのあるプリンだった。美味しかった。

 

同居人もご馳走様、とスプーンを置く。

少しもらったプレーン味も美味しかったが、同居人の瓶の底にはかき集めれば一口分くらいにはなりそうなプリンが残っていた。

 

もったいない、と思う私が卑しいのだろうか。

ちょっと名残惜しさを感じつつ、瓶は同居人の手によって回収されていくのだった。