ファミレスのパフェが憧れだった。
常々言っているが、私の実家はど田舎だ。
ファミレスも数軒あるのみで、そこへ行けば大体誰か友達の家族とばったり会ったものだ。
そんなファミレスのメニューの最後の数ページ。
カラフルな沢山のデザートが並んでいるそのページはいつだって眺めるだけに留まっていた。
当たり前だ。ファミレスには、いつも晩御飯や昼ごはんを食べに来ていた。
小さな頃の私は今と変わらず欲張りで、ちゃんとハンバーグやカルボナーラも食べたいから、デザートを食べる余力など残っていないのだ。
それに、なぜか両親が許してくれなかった。
そんなこんなで、ファミレスのパフェを食べられるようになったのは高校生になってから。
小さい頃は見ていなかった値段を見て、あれ、こんなもんかと思ったりもする。
高いと思い込んでいたパフェは、ガチャガチャ二回分くらいの値段で買えたのだ。
そして小さな頃の憧れは、きっと大人になった今だってどこかに残っている。
晩御飯を食べに来たはずなのに、私の目の前に置かれているのは赤くてかわいいパフェだった。
一応パフェだけだと晩御飯ともいえない感じなので、事前に唐揚げを少し注文してみた。
それでも晩御飯を食べに行こうと決めた時から、私はこの子がお目当てだったのだ。
季節でいちごパフェだったのは運がいい。
とりあえずこぼれそうなソフトクリームを掬って食べる。
こんな時期でも暖かい店内。ヒヤリと溶けるソフトクリームが心地よい。
いちごも酸味が効いていて、ソフトクリームの下に敷かれたコーンフレークがガリガリといい味を出している。
下の方はいちごゼリーになっていて、意外と食べ応えがあるし、ヨーグルトのような味もする。
潜っていくごとに色々な味を、たくさんたくさん味わうことの出来る見た目も美しいパフェ。
何だかんだいいつつ、いつまでもパフェは私の中で極上で高級なスイーツなのだ。
あいにく長細いスプーンは無いが、細長い入れ物は家にある。
きっとスプーンだって、100均に行けば簡単に手に入るだろう。
ずっと前から推しの色のパフェを作ってみたいな、なんてちょっと思っている私なのだが、いかんせん腰が重い。
オレンジ色のパフェ。
手先が不器用な私。失敗に終わる気しかしないが、まぁ味は大丈夫だろう。いつか挑戦したいところである。
そんなことを考えながら、目の前のパフェを完食。
昔よりも体は大きくなったはずなのに、どうにも入らなくなった胃に、ちょっと不平を漏らしつつ、ドリンクバーのホットコーヒーを取りに行くのだった。