そろそろどうにかしなければと思いつつ、冷蔵庫を開ける。
中には使いかけのベーコンブロック、キャベツが半玉。
ベーコンは心なしか色が悪いような。
最近はめっぽう寒くなってきたせいで、台所に立つ回数がかなり減ってしまった。
言わずもがな、代わりに布団に入る時間はかなり増えた。
気がつけばもう2月だ。
時の流れは早いな、と思いつつも色々なことで焦ってしまう。
迫ってくるような、襲ってくるような。
一人でいると余計に思考が回る気がする。
バレンタインも近いことだから、明日はどこかへ出掛けてみるのもいいかもしれない。
音楽を再生し、ベーコン、キャベツ、玉ねぎを並べる。
作るのはスープ。自炊の晩御飯はこれだけに頼ることが多くなってしまった。
コンソメで味をつけようか、と考えたところで、昨日届いた仕送りの中にトマト缶が入っていたことを思い出す。
元より野菜不足解消のためのスープだ。どうせなら一缶丸々使ってトマトスープを作ってしまおう。
野菜を適当に切り分けながら、また少し思考を巡らせる。
料理中、自転車に乗っている時、お風呂に入っている時。
何か無心で出来る行動をしている時は、思考は悪い方に流れていかない。
将来のこととか、特に発展的なことを考えられるわけじゃないけど、好きなことを考えられる。アイデアが湧いてくるのは大体この時間だ。
キャベツを半玉丸々入れて、塩を振って、玉ねぎ、冷凍していたえのき、ベーコンを入れて蓋を閉め、まずは蒸す。
こうすることで野菜の水分がたくさん出てくれるし、カサだって小さくなる。要するに、沢山入るようになる。
鍋を火にかけている間、調理器具を洗ってしまう。
それが終わったら台所に置いてある小さな丸椅子に腰掛けて、さっき考えたことを忘れないうちにスマホにメモする。
シャボン玉のように浮かんできたものはシャボン玉のように消えてしまうのだ。
鍋が煮えたら、半分くらいになった野菜達にトマト缶とお水、そしてコンソメを入れる。
これを煮込めば、完成だ。
真っ赤な真っ赤なスープ。
トマト缶丸々一つはさすがに多かったかな、と思いつつ、どうせ残していても台所になかなか立たない癖に、と自分をなじる。
おたまで一杯分を掬い取り、スプーンを沈める。
くたくたになった野菜、主にキャベツがそれでも存在を主張してくる。
具が多すぎて、もはや鍋と呼べるかもしれない。
コンソメの味、ベーコンの旨味も効いている。
これ一杯で多分1日分の野菜は取れる。
そうであってくれ、と半ば願いつつ、ここ数日の晩御飯は確保されたことにほっとするのだった。