いつもより遅く起きた朝。
今日はいくつか、時間に縛られない予定があるのだった。
カーテンを開けると、ちらほらと雪が降っていた。
今年は本当に雪とよく出会う。
これで曇天とくれば気分も下がっていたのだろうが、あいにく今日は晴天だった。
雨か、酷い雪ならば外出を控えようと目論んでいたのだが、どうやらそれは失敗のようだ。
まだ眠気の残るまま、食パンを片手に一時立ち止まる。
最近はトーストのバリエーションも狭まってきた。
理由はこの起きていられなさと、冷たい台所だ。
朝、ただでさえ寒くて布団が温かくて色々なこと躊躇するというのに、この家の中で最も寒い台所に立つわけにはいかなかった。
決して朝ごはんをおろそかにしたいわけではない。
私だってそろそろアボカドトーストが恋しいのだ。
そこまで考えて、はたと冷蔵庫の扉、牛乳を見る。
そういえばアボカドトーストと並んで恋しかったものがあったんだった。
スーパーで一番安い、しかも賞味期限の切れた食パンはパサついているから丁度いい。
牛乳と卵、砂糖をボウルで混ぜて、そこに食パンを漬ける。
せっかくだからバターは多めでフライパンに。
最後にチーズを乗せてはちみつをかける。
時間に融通の効く朝だからできるご飯。
フレンチトーストだ。
はちみつは例の如くジャムのように固まってしまっているが、そこはご愛嬌だ。
スプーンで適当に切って一口。
牛乳を多めに入れたからか、普段よりひたひたに浸かった食パンはぷるぷると柔らかい。
ひっくり返す時に二つに割れてしまったほどだ。
今回は入れなかったが、バニラエッセンスを入れればプリンのような味にもなりそうだと考える。
チーズを一枚入れることで満足感も増して、ちょっと豪華なものを食べている気分になる。
とろとろと、熱でとろけたはちみつを味わいながら、そういえばジャムを長らく使ってないなと感じる。
普段は卵と食パンの組み合わせが多いからあまり使わないが、時々猛烈にジャムを食べたくなる瞬間が訪れる。
ごろごろとした果実入りのジャムは、実は私のお気に入りなのである。
しかし、実家にいる時もジャムを使う人が私しか居ないから、という理由でなかなかジャムを買ってもらえなかった。
最近は朝ごはんに限らず手を抜いてしまうことが多い。
ジャムでも買ってみれば、この恋しがるばかりの朝ごはんにも花が咲くだろうか。
久しぶりのきちんとした朝ごはん、フレンチトーストに舌鼓を打つことで、次の朝ごはんへのインスピレーションが湧いてくる。
可笑しくて、可愛い循環だ。
ジャムを買うなら何味にしようか、空想に耽りつつ、明るい朝の時間は過ぎていくのだった。