朝、用事を済ませて家に帰る。
もっと時間がかかるかと思っていたのだが、実際作業は30分くらいで終わってしまった。
外に出るための気力に見合わない、お粗末な用事である。
麺を食べに行きたいという同居人の要望から、今日は朝ごはんを食べていなかった。
最近はすぐにお腹がいっぱいになってしまうから、ボリュームのあるご飯を食べる時は大体一日一食になってしまう。
とはいえ、気力を使った後である。当然お腹は空く。
空腹は一番健康に良くないように感じる。体だけではなく、心にも。
お腹の中心が満たされない感覚はどんどん広がっていって、頭にすら何も入ってこない感覚に陥る。
思考も言動も一直線になってしまい、ちょっと動物的になるような。
そんな時は大体何をやっても上手くいかないものだ。
この恵まれた国、日本で生きていてなお満たされないことは世の中一杯あるのだから、せめてその恩恵にあやかって、自分のお腹くらいは満たしてやらないといけない。
12時を2時間過ぎて、小さなまぜそば屋さんを訪れる。
前にも来たことがあるが、少し見ない間に、店内にあったはずの食券が店の外側に配置されていた。
メニューもそこまで多くないから、優柔不断な私に優しい。
完全に「いつもの」になっている定番のまぜそばを頼み、席に座る。
初めて通される2階席はこじんまりとしていて、見たこともない屋根裏部屋を想起させた。
スマホを適当にいじりながら少し待っていると、お供え物のような僅かな量のごはんと一緒に、大きなお皿に入ったまぜそばが出てくる。
何度見ても美味しそうだ。
ぐるぐると底からかき混ぜて、一口。
ニンニクが大き目で、少し辛かった。以前来た時にはニラが多めに入っていたから、店主の気分なのだろうと思う。
ズルズルとぽっかり空いていた胃に強い麺が入っていく。
お腹が満たされた時、他のものも満たされればいいと思う。
私が欲しい栄養は一体何なのだろう。
最後のタレにご飯を入れて、いよいよ完食してしまう。
お腹も一杯で、きっともう今日は食べなくても済んでしまう。
それでもやっぱり、何かは簡単に満たされない。
言うなれば、私はずっと飢えているのだ。
店員さんが1人、おそらく賄いを持って少し離れた席に座った。
もしもここで働いて、このまぜそばを毎日食べたところで、きっと私は空腹だ。
お腹だけが満たされて、ちらほらと雪が降る中帰路を急ぐ。
生きていてよかったと、いつか思えればいいと思う。