バレンタインに同居人にアポロを買った。
最初の方は手作りをしていたのだが、ホワイトデーにほぼ何も返ってこなかったことを鑑みてこの状態に至る。
しかし、今年はそのお礼にとコーヒービートを買ってくれるらしい。
別に期待してなかったからいいのに、と思いつつ、促されるままショッピングセンターに付属している駄菓子屋さんに向かう。
育った地域のせいか世代のせいか、私は駄菓子屋として独立している駄菓子屋を見たことがない。
それでも謎の懐かしさを感じさせる、ショッピングモールの一角の駄菓子屋が私は好きだった。
そこに買い物へ行くたびに母親にねだっては、何か細々としたお菓子を買ってもらっていた。
今日もコーヒービートだけで終わらせる気はさらさらなく、子供用に作られたであろう小さなカゴを手にする。
あの頃とは違って、今は好きなものを好きなだけ買うことができるのだ。
とりあえず小さなお菓子から見ていく。
私が駄菓子屋で買うのはモロッコヨーグルトや、コーラ缶のようなパッケージに入ったラムネなど、化学的なお菓子が多い。
何となくそっちの方が駄菓子屋らしいと思うからだ。
ちなみにねるねるねるねは大人になってから買った数の方が多い。
きっと誰しもが特に買ってもらえなくて、買って欲しかったお菓子だと思う。
特に味が好きなわけではないが、あの頃の欲求を満たすように買っている。
他にも適当に物色した結果、ガブリチュウと笛ラムネというなんとも無難なレパートリーに落ち着いた。
お菓子パーティーをするには少々心もとないラインナップだが、一人で楽しむ分にはこのくらいの規模が丁度いいのだ。
ちなみにコーヒービートは何故か大きなサイズのものを買ってくれた。
マーブルチョコもベビーチョコも好きだが、一番好きなのはコーヒービートなのだ。
並べてみると、どこかおもちゃのようである。
そういえば小学生の頃、遠足でイケてる女の子がセロハンテープの形をしたソフトキャンディかガムを持参していたことがある。
当時はそれがとても羨ましくて、私も買ってみたいと常に思っていたのだが、なぜか店頭で見かけることはなかった。
色々なおもちゃも一緒に売られている駄菓子屋。
来るたびに知らず知らず、そのセロハンテープのようなお菓子を探してはみるが、いまだに見つけた試しはない。
もう半ば諦めかけめはいるが、きっと見つけたら、そのおもちゃのようなお菓子を私は買ってしまうのだろう。
サワーのラムネを開けて、ザザッと流し込む。
ザリザリとした硬い食感は、今でもずっと変わらない。