食べ物と私

食べます。

変換肉寿司、仕方なし

同居人との同居が最終日を迎えた。

別にこれで関係が解消されるわけではないのだが、一応の区切りということだ。

 

二人で生活費を貯めていたため、今日の晩御飯はその生活費を使って焼肉にでも行こうと計画していたのだ。

計画していたのだが。

 

いざ、さあ行こうとなった時、なぜか同居人が鍵のことについて言及してきた。

 

同居人が退出する時、私は鍵を返してもらおうと心に決めていた。

それは先日、友達と会ってから固くなった決意ではあるのだけれど。

 

こっちに決定権があるような聞き方だったため、返してほしいと素直に言った。

すると同居人は黙り込み、そっぽを向いて放心してしまった。

仕方なしにスマホをいじる。

 

何だろう。何をして欲しいのだろう。

聞かれたから答えただけなのに、なぜ私がこんな気持ちになっているのだろう。

 

これはもう晩御飯も楽しくないな、と。

 

だから、「やめよっか」と一言。

 

同居人はいや、行こうと言っていたが、私がもうそんな気分じゃない。

そう返すと、どんな気分かと尋ねられた。

 

想像してみる。

焼肉屋に行ったらきっと同居人は空元気で無理矢理元気に振る舞っている姿を私に見せるのだろう。

そしてそれを分かっているから、私も気を遣ってテンションを上げる。

お互いに乗り気じゃないと分かっていても、その場の何かのために、私たちは食の場を演じるのだ。

 

何てめんどくさい。そんな食事はまっぴらごめんだ。

 

そう思って、そのまま同居人に伝えた。

また落ち込み始める同居人。負の連鎖でしかない。

 

それからしばしの話し合いの後、何となくだけど輪郭が掴めてくる。

 

彼氏としては、どうやら「恋人としての自信」が欲しかったらしい。

どこをどう恋人として見ればいいのだ、というのが本心だったが、これ以上拗ねられるのも面倒だった。

 

理解はしたが、了解はしていないというような言葉を返し、結局その場はお開きになる。

 

そして鳴いているお腹はどうしようもないので、Uber eatsで肉寿司を注文。

同居人はこれがはじめての肉寿司だった。

 

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醤油につけて食べると、とろとろと肉が溶けていく。それでいてくどくもない。

口の中で何が起こっているのかよく分からなかった。

とりあえず美味しいことだけは確かだ。

 

同居人も気に入ったようで、どんどん箸を進めていく。

美味しいね、と笑い合っているには幸せな時間なのに、どうして取り止めのないことに目が移ろってしまうのだろう。

 

本当に、こうしている分にはずっとでもいいのに。

 

きっと同居人も私も、こうして色々なことを忘れていって、そしていつか気付いてしまう。

その日が来てほしいような、そうでないような感覚と共に、肉寿司の最後の一貫を食べ終えた。