午後から用事がある日。
まだ寝ていてもいい時間にのこのこと起きてしまう。
何をするでもなくベッドの上でスマホをいじった。
小学生の頃から、午後に用事があることが苦手だった。
例え同じ時間、同じ用事でも、午前と午後、どちらにその用事があるのかでかなり心持ちが変わってくる。
そもそも一日のうちに何かしなければいけないことがあると、そちらばかりに気を取られる人種なのだ。
いくらリラックスしていいと言われたところで、用事が後に控えていればそのための心の準備が必要になり、結局用事が終わるまで気が抜けない。
実質ずっと用事をしているのと同じ現象になってしまうのだ。
だから私の辞書には「午前休」という言葉は存在しない。
午後に用事がある時、午前はもう休みではないからだ。
まだ随分早い時間なのに、服を着替えて、化粧をする。
髪も整えてしまえば、もう寝転ぶことも出来ない。
どうせだからと洗濯物を済ませ、無駄に働いてみる。やはりどうにも落ち着かない。
以前、遊ぶ約束をしていた友達が、歯医者が長引いたことによって遅刻したことを思い出す。
友達と遊ぶという用事の前に歯医者という用事を入れる。
遅れたことは別として、一日に二つも用事を入れられるのは、本当に器用なことだと思う。
ひとつの用事で手一杯になってしまう私には到底出来ない技だ。
そわそわと何度も時計を確認しながら、まだ朝ごはんを食べていないこと、そして朝ごはんになるはずだったクリームパンを昨日の夜に食べてしまっていたことに気がつく。一瞬、フリーズ。
落ち着かないなら、いっそのこと早めに行ってしまうのもありだった。途中のコンビニで何か買えば、お腹も満たされる。
……けれど。
冷蔵庫の中を見る。
諸事情あって、明日までにこの中を空にしなければいけなかった。
そして卵は残り六個。
全部は無理だと悟りつつ、せめてもと二つ、卵を取り出す。
それから小麦粉にベーキングパウダーを混ぜ、砂糖を適当に。ここで卵を二つ。
何となく「ぽく」なったところでフライパンに全投下。
しばらく焼いたら、何ちゃってパンケーキの完成だ。
牛乳も入っていない、何の分量も測っていない、本当に偽物のパンケーキだ。
偽物にふさわしく、ナイフではなくフォークとスプーンを使って切り分ける。
粉の量に対し二つも卵入れたからか、一口が想定よりも重い。しかも砂糖が少なかったのか、あんまり甘くない。
めんどくさがるから予定通りにいかない。
けれど、それなりにはやはり美味しく仕上がるもので。
結局何だかんだぺろりと食べ終えてしまい、お皿を洗う。
家を出るまであと二十分。ちょうどいい時間だった。