食べ物と私

食べます。

あの子のてりたま

毎年、この季節になると思い出すクラスメイトがいる。

厳密に言えば、私は友達と思っているものの、相手はどう思っているか分からない。そんな人。

 

高校の頃に仲良くなった女の子だったが、今は一切連絡を取ることはなくなった。

また同窓会でもあれば会う機会があるのかもしれないが、このご時世だ。分からない。

 

ただ、この時期になると彼女のインスタグラムは活発に動き始める。

 

彼女の好物はマクドナルドのてりたま。

 

この時期にしか発売されないてりたまをここぞとばかりに食べ漁り、彼女はその記録を皆に発信しているのだ。

そして流石と言うべきか、つられやすい私。

毎年律儀にその投稿を見て、てりたまを食べたくなってしまうのだ。

 

例にも漏れず、今年もインスタグラムのストーリーを見て、春がきたな、と実感する。

実家から帰って少し丸くなった頬。

それでも食欲には抗わず、私はこの時期の味をテーブルの上に広がるのだった。

 

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ハンバーガーの食べ方が著しく下手な私。

照り焼きバーガーはソースがべたべただからか、必ずどの店のものでも上手く食べ切れた試しがない。

必ず目も当てられない惨状になるのだ。

だからてりたまを食べる時は家だと決まっている。

 

予想通りちょっとベタついた紙を上手くはがし、卵の分だけ厚くなったハンバーガーにかぶりつく。

甘辛い醤油ベースのタレとマヨネーズ、レタスにたまご、チーズ、そしてお肉。

 

子供騙しのようなかわいい味。

食べ慣れた、ジャンクでまろやかな、どっちつかずで美味しい味だ。

 

紙についたてりやきソースをポテトで掬いながらそういえば実家に帰る前、妹もこれを食べたいと言っていたことを思い出す。

 

実家のマクドナルドはとても歩いて行けるような場所にはないけれど、妹は車があるのですぐに買いに行けるだろう。

案外、今も同じものを食べたりしているのかもしれない。

ひょっとすると、随分顔を見ていない、てりたま好きのクラスメイトも。

 

それにしても、毎年心待ちにしているなんて、ここまでくれば私もてりたまのファンなのかもしれない。

 

けれど、私の中のてりたまファンは紛れもなくあのクラスメイトだ。

てりたま愛でいえば、私はあの子に一生敵わない。

たとえ彼女の嗜好が変わっても。

 

同じクラスだったから話していただろう友達。

私がまた彼女と会うことはあるのだろうか。

そもそも彼女がこうして私を思い出すことはあるのだろうか。

 

分からない。し、考えるとなぜか少し寂しい。

 

でも、今度会ったらちゃんと伝えたい。あなたのてりたまの投稿を楽しみにしてることと、あなたのおかげでてりたまが好きになったこと。

 

きっと、彼女にそう伝えるのだ。