パンケーキを作りたい。
突如そんな欲に支配される。
どちらかというと食べたい、より作りたい、だった。
何だかいつもより寒い。
布団からどうにか出て、少し前に買っておいたスーパーのブランドのホットケーキミックスを取り出す。
このホットケーキミックスを使うのは初めてだった。
お腹がぐうと鳴る。
作りたいとは言ったが、多分、お腹も空いている。
休みの日の朝、母が食卓にホットプレートを用意し、ホットケーキを作ってくれたことを思い出す。
あの時は何にも考えていなかったが、今思うと朝から母はすごい労力を使っていたと思う。
トロトロした生地を小さめに落としながら、順番にひっくり返していく。
ちょっと歪な形を作ったり、ひっくり返す時よれてしまったり。
個性豊かなパンケーキ達。温かくて甘い匂い。
チョコソースに蜂蜜にバターに。
各々で飾り付けながらゆっくりと食べる朝食の時間が、私は好きだった。
ゆったりと、なんて余裕は今の私には無い。
ホットプレートだって随分出していない。
けれど、今はホットケーキが食べたいと。その気持ちがあるだけで十分に思えるのだ。
牛乳は切らせてしまったため、代わりに水で作る。
大きめのボウルに卵、ホットケーキミックス、水。
ガシャガシャと混ぜるも、何だかいつもよりかなりもったりとした生地。
どうやら少し重ための子らしい。
おたまからなかなか離れてくれない生地を、どうにか操ってフライパンに落とす。
どの説明書きにも、一度フライパンを濡れ布巾の上で冷ますことが推奨されている。
それをやらないからだろう。いつも1枚目のパンケーキはうまく焼き色がついてくれない。
でも、味に支障はないので問題もない。
2枚目からは順調に、あれよあれよと焼き上げていく。
やはりいつもより厚みのあるパンケーキになった。
これは水で作って正解だったかもな、なんて思う。
ちょっとしょっぱいものが食べたい気分だったから、目玉焼きとウィンナーを焼いて添える。
奥のパンケーキにはチーズも。
お腹が空いていたせいか。
何だかどでかいブランチになってしまった。
相変わらずナイフが家にないので、スプーンとフォークで切り分ける。
分厚いから心配していたのだが、大丈夫。しっかり中まで火が通っていた。
ほんのりと甘く、口の中の水分が全部持っていかれてしまう。
ザ・家庭のパンケーキという味がした。
お皿から溢れないよう、もぐもぐと食べ進める。
作って、食べて。
その動作が一番楽しいのはパンケーキなんじゃないかな、と、一人暮らしを始めた当初から思っている。
この2枚以外の、食べきれなかったパンケーキを冷蔵庫にしまう。
きっと今日が終わる頃には、この子達も居なくなる。