体が重い朝。
何度目かのアラームが鳴る中、早く起きなければと起きていない頭が喚く。
どうにもやる気になれない。最近頭がぼうっとしている。
先週大きな仕事を終えて、気が抜けてしまったのだろうか。
家に引きこもっていたいし、そんな道を選んだはずなのだが、どういうわけか毎日外に出ていたりする。
何が忙しいのかは分からないが、毎日動いている感覚。
ちょっと心もとない。もう少し休みたい感じ。
ぐだぐだそんなことを考えていたってしかたないから、どうにか起き上がって仕度をする。
よく眠れていないような気がしている。
眠る時間は長いくせに、何度も眠りの間に目覚める。ずっと足りない、ずっと眠い。
原因は何となく分かっている。ただ明日に行きたくないだけだ。
昨日作ったカレーを食パンの上に乗せる。
真ん中に卵を乗せて、上にチーズをかけてみる。
そのままトースターにゴーだ。
ヘアアイロンを温めながら、今日の化粧を諦める。
外出と化粧が必ずしもセットなら、私はとっくの昔に外出を諦めている。
髪はそれなりに整えて、一息つく。
私は家にいる時こそ生きているのだと思う。
外で笑うことやおちゃらけることは多くなったが、別に楽しくてやっているわけじゃない。
人の前に出る時、笑顔はオート機能で備わっている。
外見と内面と立ち位置と。それらを合算して一番いい選択は、きっと出来ているんだと思う。思いたい。
トースターの叫び声を聞きながら、アボカドトーストを食べたいんだったと思い出す。
アボカドが食べたいと思いつつ、スーパーに行くタイミングもつかめないし、行ったとしても買うことを忘れてしまう。
上手く生きることが出来ていない証拠だ。
ずっしりと重いトースト。
さくりと食べれば、具たくさんのカレーが口に入ってくる。
しかし、食べるのすら難しい。卵の火の通りが甘く、ぼたぼたとお皿に黄身が落ちた。
それをどうにかしようとした時、カレーの具だって落ちてしまう。
美味しいけど、難しい。
深い深いため息を吐きながら、ゆるゆると立ち上がる。
今日はちょっと遅くなる日なのだ。一刻も早く帰りたい。
家にいる私の顔は誰も知らない。
私の頭の中は私にしか分からない。
なのに、私はその私を外で上手く見せることが出来ない。殺すことしか出来ない。
軸が無いような気がする。
最近は家ですら上手くしたいことが出来ない。多分、疲れている。
外ではどうでもいいが、家の中だけは頭が働いてほしいと思う。
じゃないと本当に死んでいるのと同じだ。
冷蔵庫にまだ余っているカレーを戻す。
今度はアボカドを食べたいと。ぼんやり思った。