食べ物と私

食べます。

おとなになったチョコミント

晩御飯を適当に終えたのに、まだ胃には空きがあった。

最近は夜になるとお腹が空く。

理由は分からないが、朝に胃がもたれてしまうのは確実に夜食べ過ぎているせいだろう。

 

そんなことは分かり切っているのだが、今日も今日とて懲りずに追加で冷凍庫を開く。

ちょっと暑くなって来た。アイスが恋しくなる季節である。

 

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チョコミントアイス。

数年前からコンビニに並び始めたこいつは、時折私のことを呼ぶ。

 

母はチョコミントアイスが好きだった。

温泉にあった自動販売機、セブンティーンで母は必ずと言っていいほどチョコミントを選んでいた。

毒々しいその色と、スースーする感じ。

食べられないことはなかったが、好んで選ぶことはなかった。

アイスは甘くてなんぼだと思っていた、

 

ずっしりと重いカップを手に、蓋をあける。

スレスレまで詰まった青色。

木のスプーンで掬い上げて一口。

程よくスッキリしたミントが喉を抜け、バリバリと冷たいチョコがその後を追う。

 

思えば炭酸を飲めるようになるのも、チョコミントを好んで食べるようになったのも、私は妹より遅かった。

私はあまり新しいことに興味がなかった。

もしくは大人に近づくことが、その頃から嫌だったのかもしれない。

 

冷たくなっていく体を感じながら、冷蔵庫の中にトリスのハイボールがあることを思い出す。

随分と前にやっていたドラマ、『凪のお暇』でハイボールにチョコミントアイスを乗せた食べ方を紹介していた。

 

それを見て、飲み方は好きじゃないと言ったのは、母と元同居人である。

 

私はやってみたいと思った。

しかし、なんだかんだ今までやったことがない。

今だって材料は揃っているはずなのに、明日早いからと理由をつけて、ハイボールは冷蔵庫にしまったままだ。

 

やってみたいままにやってみればいいと思うのに、私はまた他人の言葉に縛られたままでいる。

 

そうこうしているうちに、あれだけあったアイスは全て胃の中におさまってしまう。

でも、胃が衰えたのか、ぎっしり満足が重たくなっている。

お腹が冷たくていっぱいだ。

 

スーパーカップなんて、きっともう一回じゃ食べきれないんだと思う。

高校の頃は部活終わり、友達と一個ずつぺろりと平らげてしまっていたのに。

 

色々なことを、色々な人を受け入れながら、私は今日まで生きている。

きっと誰だってそうだろう。

どこかで屈折し、取り入れて、削いでいる。

原型なんて留めてはいないのだ。

 

でもその代わり、私はチョコミントアイスの美味しさが分かったし、ハイボールが飲めるようになった。

多分、決して悪いことばかりではなくて。

 

大人だけの特権。

今度はきちんと、クリームソーダよろしく、ハイボールにチョコミントを乗せてみようと思った。