食べ物と私

食べます。

酎ハイ一本、一時間。

色々終わった後、1人の仲のよい女の子が飲みたい、と言った。

どうやら現実に向き合うのがちょっとつらいらしい。

気持ちがすごくよく分かる。

 

じゃあ私も付き合うよ、私も、私も、と、計5人で近くのコンビニに向かう。

都会である割に周りに飲食店はないのだ。

でもそれ以前に、飲食店で飲むようなお金が今私には無かったから正直助かった。

約束事や面倒事が嫌いなだけで、こういう楽しい雰囲気は大好きなのだ。

 

「ちょっと、やっぱり帰るね」

 

その時、一人、女の子が帰って行った。

一瞬、その子を除いた4人にしか分からない話をした時のことだった。

 

私なんか居たら邪魔だから、気を利かせて帰ろう。気を利かせて。

そんな声が透明な扉をくぐる背中から聞こえてきた。

 

そう思うなら最初から着いてこなけらばよかったものを。

誰も彼もがいつでもあなたのことを気にしているわけではない。

気を利かせたつもりだろうが、残されたこちら側の空気は少し微妙になる。だって貴方のその声が筒抜けだから。

悲劇のヒロインぶってるんだろうな。

なんて、どうしようもないことを思う。

 

一旦そうと決めてしまうとどこまでも否定的に、攻撃的にとらえてしまう。

きっと私の悪い癖だ。きっと。

 

でも、雰囲気はどうしても楽しいままだ。

帰っていった女の子の影響力は、所詮そんなものだった。

 

1人一本、安いチューハイと安いおつまみを両手に近くの公園へ向かう。

ちなみに私は飲んだことが無かった翠のチューハイと、安かったコロッケを選んだ。

今日の写真はない。本当に楽しい時は写真を撮れないのが私の性分だ。

 

向かい合わせのベンチに腰掛ける。

もうかなり薄暗いというのに、周りにはサッカーをしている少年や、芸の練習をしている人など、なんとなく人気が残っていた。

 

それからは、ただただ無作為に思ったことを話した。

色々考えてしまう脳にはアルコールで蓋をする。

多分今は考える時間じゃなくて、全部吐き出して、それから忘れてしまう場だ。

 

爽やかに少し甘いチューハイをゆっくり飲みつつ、まだ温かいコロッケを頬張る。

久しぶりにコロッケを食べたが、なんだかじゃがいもがトロトロでかなり美味しかった。

場の雰囲気というスパイスもその要因だろうか。

 

結局1時間くらいその場で喋り、後腐れなくお開きとなった。

さっぱりとしていて、とてもいい夜だと思った。

ちょっと辛そうだった発案者の友達も、ちょっと頬を赤らめて笑っている。

 

こんな楽しみがあるから生きているのも悪くない、とは残念ながらまだ思えない私で居るのだが、それでも迷宮のような思考から少しの間、逃れられたかなとは思う。

もっといろいろなことを話したいな、と自分勝手なことを思いながら、私は帰路に着くのだった。