食べ物と私

食べます。

夜、軟骨の唐揚げとハイボール

夜のコンビニが好きだ。

 

まだ眠りたくない、それでいて物足りない、どっちつかずの気持ちを燻らせながら、夜でも薄く明るい道をとことこと歩く。

 

実家で暮らしていた時や、前の家にいる時は滅多に夜に出歩くことはなかった。

実家はそもそもまわりに何もないし、夜は危ないから出歩くなと言われていたクチだから。

前の家でも何となくその言いつけが頭にあったのだけど、この頃は夜の散歩が結構お気に召している。

 

散歩、といってもほんの数百メートル。

それだけの散歩で、夜中にも明るいコンビニに辿り着いてしまうのだ。

 

寝巻きにしているジャージにパーカーを羽織っただけ。

昼間では到底晒せない姿で入店音を鳴らす。

雑誌を読んでいる人、お酒を選んでいるカップル。

みんなちょっと真夜中の雰囲気。

お昼のコンビニの忙しなさはなくなり、全く別のお店みたいに感じる。

フライヤーがなかったりするのはちょっと残念だが、そこも夜のコンビニならではの話だ。

 

何かの作業をしている店員さんを横目に、ゆっくりと商品を選ぶ。

デザートには30円引きのシールが貼られていた。

コンビニでもこのシールが登場すると知ったのも、一人暮らしを始めてからだった。

 

結局、トリスハイボールと軟骨の唐揚げ、そして明日の朝のパンをカゴに入れ、レジへ持っていく。

温めは家で。これからは私一人の時間だった。

 

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軟骨の唐揚げを一口。衣がふわふわで、思ったより骨が骨だ。コンビニのものは初めて食べたが、噛みごたえがあるから結構お腹がいっぱいになりそうだ。

ファミレスに行ったら絶対に軟骨の唐揚げを頼んでいたあの子は元気かな、と思いつつ、トリスハイボールを煽る。

いつも通り、レモンが効いていて美味しい。

 

こういう時間を寂しいとは思わなかった。

時々焦燥感に駆られることはあるけれど、私のための時間。

まるで世界に私しかいないような、そんな錯覚に陥る時間。

 

穏やかだと思う。

アルコールのおかげもあって少し楽しい気分になって、不安がつかず離れず、丁度いい距離まで離れていってしまって。

この時間に閉じこもることができたら、あるいは幸せなのかもしれないと最近は思ったりもする。

そんなことは、やっぱりちょっと難しいのだけれど。

 

軽い蒸し暑さに、夏が近いことを感じる。

これから忙しなくなることは分かっている。

でも私は、どうにかしようと思わなくていいってことと、頑張らなくてもいいことを知っている。

 

駄目な人間なのだろうか。

だとしても、私はそれでいいと思う。

 

アルコール。揚げ物。夜。

ちゃんと私は息をしている。