食べ物と私

食べます。

美味しい呪文とティラミス氷

去年のことを思い出す。

陰鬱とした心情とは裏腹に、どうにか何でもないように振舞っていたような気もするあの頃。

 

朝10時から夜8時まで続く地獄にあっぷあっぷだった私とは対照的に、私の大好きな同期は「3時のおやつ」を絶対に忘れなかった。

 

近くにあるコンビニ。

休憩の合間、そこでアイスコーヒーとアイスを買ってくるのが彼女の日課だった。

そんなことをするうちに店員のお姉さんと仲良くなり、アイスを奢ってもらっていた。

3時のおやつなんて、そういえばそんな単語もあったな、とエナジードリンクで腹を膨らませている私にとって、彼女は本当にいきいきして見えた。

 

そして昨日。そんな彼女が久しぶりにアイスを買ってきていた。

「これもう3つくらい食べてる」

そんなことを言いながらパクパクとアイスを食べ進める。

ご飯として買って来たであろうパスタが横にあるのに、とけちゃだめだからー、とアイスから。

 

凄く元気だと思う。なんだか眩しい。そしてとても可愛らしい。

なおも幸せそうにアイスを頬張る彼女を見て、私もそのアイス、食べてみようと決意したのだ。

 

それが、これ。セブンイレブンの『ティラミス氷』。

 

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蓋を開けると一面にココアパウダーがふられている。

スプーンを差し込めば、すんなりと奥まで刺さった。

冷たい一口。ちゃんとチーズと、下の層、コーヒーとスポンジの味。

紛れもなくティラミスだ。

それでいてじゃりじゃりと、確かに氷で冷たくて、軽くて、濃厚で。

確かに美味しい。あの子が3つも食べるのも納得だった。

 

「あなたは美味しそうにものを食べるから、皆に好かれるね」

 

また、呪文のような父の言葉を思い出す。

私は魔法が解け切っていないから、この言葉を嬉しく感じてしまうのだけれど、それはおいといて、美味しそうにご飯を食べる人は魅力的だと思う。気づけばこちら側も笑顔になってしまうのだ。

 

Youtuberの『にゃんたこ』さんがいつか、どこかの動画で、食べることは生きることと同義だから、美味しく食べている人には生を感じて魅力的に映るのではないかと言っていた。

なるほどな、と思う。

食べることは生きること。確かに、確かにそうなのだ。

私なんかとっくに麻痺しているけど、第一の目的は娯楽ではなくて栄養摂取だ。

その行為ですら娯楽に出来る、娯楽にしなきゃ生きていけないのが人間なんだろうけど。

 

冷たいアイスを食べ終わり、ほっと一息つく。

私がどんな顔をして物を食べているのか、私は知らない。

もし美味しそうに、さも魅力的にご飯を食べているのなら、それは少し滑稽なようにも感じる。

 

食べることは、好きなんだけどな。