スーパーに行ったらピーマンが大袋100円で売られていた。
脳死で買い物かごに入れてしまう。今が旬の野菜。買っておかない手はない。
それからコーヒーやパン、当たりさわりのないものを買った後、スーパーを去る。
この日はどうにも暑かった。
部屋について、速攻で冷房を入れてやる。
一人暮らしをし始めた時はギリギリまでケチっていた私だったが、暑かったり寒かったりすると頭が著しく働かなくなるので、もう我慢は1ミリだってしないことにしている。
人間だって動物だ。適温はある。
立派で大量なピーマン。
一番最初に頭に浮かんだのはピーマンの肉詰めだったが、あれはどうにもめんどくさい。それにミンチが高かった。
以前やった、つくねに生ピーマンも美味しかったが、生で食べきるにはちょっと厳しい量。
ということで、めんつゆにつけてみることにした。
この料理はよく実家で母が作っていたものだ。
茄子やピーマン、ししとうを素揚げにして、油を切ってからめんつゆにつける。
そうすると衣はついていないのに、まるで天ぷらのような味がするのだ。
茄子なんか、特に中身にめんつゆが沁みていて美味しかった。
一人暮らしをし始めてから、茄子とピーマンが手に入ったら真っ先にこのめんつゆ漬けを作っていた。好物と言ってもいいのかもしれない。
適当な大きさにピーマンを切り、揚げ焼き……ですらちょっと面倒なのでごま油で焼くだけにとどめておく。
夏のキッチンは暑いのだ。
パチパチと音がして、緑色の肌にいい感じの焼き色が付く。
心なしかしなっとなった感じ、でもちょっとしゃっきり感を残して引き上げる。
これで完成。あとは冷蔵庫で冷やすだけだ。
煮卵や浅漬けなど、放置して味が沁みていく料理は結構気に入っていたりする。
長く楽しめる感じがするからだろうか。夏になるとこれらの料理は絶対に作り始める。
考えてみるとカレーも好きだったりする。熟成、という単語にはやっぱり惹かれるものがあるようだった。
粗熱を取ったピーマンを冷蔵庫に仕舞って、クーラーの下でちょっと涼む。
一昨年はこの野菜のめんつゆ漬けを作れないでいた。
理由は簡単。なぜか茄子が安くなってくれなかったから。
去年も作っていない。
理由は明白。そんな心の余裕はなかったから。
そう考えると、今は随分豊かになっていると思う。
暮らせている感じがする。毎日を過ごせている感じがする。
多分、これでいいのだと思う。私の望んだ、有効期限付きの幸せだ。
新しく処方された薬が効いているのか、最近は調子がいい。
今度ははちみつレモンでも作りたいところである。