食べ物と私

食べます。

未来とトースト

将来の話をして死にたくなる。

 

業務が終わり、家に帰った。また昼ごはんを微妙に食べ損ねてしまった腹がぐるると鳴る。

仕方なしに、オーブントースターを準備。

 

今日、業務の中で上の人と話すことがあった。

その人は穏やかな人だと思う。でも臆病で、その臆病さを分かっている人だ。

私がそんなこと言える立場ではないのだけれど。

 

その人は今の私達を呑み込んでいる状況をよく思っていないようで。

何かが納得いかなかったのか、その人はそのことについて語り始めた。

 

曰く、やはり私達は忙しすぎるらしい。

もう少しのんびり、何をやっているか実感しながら生きていく方がいいのではないかと。

 

私もそう思う。

皆はなぜか向上心を持ちすぎなのだ。

もうちょっとサボったり遊んだりして、気ままに生きればいいのに。

 

そんなことを言ってみると、突然

 

「ええ、これからどうすんの?」

 

話が急カーブしてきてびっくりした。

いやいや、さっきゆっくりでいいって言ってたじゃん。あんた。

 

なーんてことは言えずにちょっと苦笑いをこぼす。

多分目からハイライトは消えていた。

 

「どうするんでしょうね」

 

他人事のようにそう呟く。

他人事であればどれだけ良かったか。

 

私の大好きな小説に、森絵都さんの『カラフル』という作品がある。

そこの考え方でいくと、自分じゃない誰かの体を借りていると思えば、人生は少し楽になるらしいが。

なかなかそう上手く洗脳されてはくれない。

 

チーズを乗っけて焼き上がったトースト、その上にこの前作ったトマトとツナを乗せる。

 

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バランスの悪いトーストの出来上がり。

どうにか平行を保ちながら、パクリとトーストにかぶりつく。

甘いトマトとチーズ、ツナがよく合う。

よく合うけど、やはりぼたりとトマトが皿に落っこちた。

でも、美味しいなと思う。

 

向上心のあるあの人達は、こういうご飯って食べるのかな、とふと思ったりもする。

命の一滴を全部活字に注いで、残りの活力は接待に注いで。

 

ちゃんと自分のご飯を食べているのだろうか。

ちゃんと自分のことが見えているのだろうか。

 

将来の話をして死にたくなる。

やっぱりどう考えても私はこの先、生きていけないような気がするし、だからといってどうすればいいのかも分からない。

 

でも、それでも生きていかなきゃいけないのなら、私はずっと自分のご飯を美味しく食べていたい。

ちゃんと自分のことを見ていたい。

 

そのためにはのんびりすることが必要不可欠なのだけど。

 

落ちたトマトも食べてしまう。

まだ寿命はこない。