よく眠れなかった朝。
オーブントースターにパンをセットしてベーコンと卵を焼く。
ベーコンが先にいい塩梅になってしまったので、卵は両面焼きで。
頭がぼうっとする。寝不足のせいだ。分かっている。
昨日、イベントが終わった。
すなわち、小説が世に出た。
私がこの界隈で二次創作を始めたのは、そんなにまだ作品が上がっていなかったからだった。
誰も作らないなら私が作らないと、私が読めない。
そんな私主語で始めた二次創作が、今はちょっと色々な人に読んでもらえていて。
嬉しい反面、何だか少し焦ってしまうのも事実だ。
焼き上がったパンの上にベーコン目玉焼きを乗せる。完成。
不恰好なトースト。ハウルもガッカリかもしれない。
ベーコンと卵が落ちないよう、そっと食べる。
塩気が丁度良くお腹を満たしていく。
変な焦り。元々感じなくてもいい焦り。
つまりは承認欲求だ。
そんなものに振り回される私は死ぬほど下らないし、死ぬほどダサい。
頭では分かってはいるのだが、何度も何度もいいねの数を見に行ってしまう。
コメントが来ていないか見に行ってしまう。
何度も何度も画面を引っ張って更新を繰り返す。
膨れ上がる承認欲求はどうすればいいのだろう。
醜いと分かっていてもどうにもならない。
前に読んでいた漫画、『ドメスティックな彼女』。
いわゆる男性向け漫画で、私はイライラしっぱなしだったけど、ひとつだけ印象に残っているシーン。
確か主人公の隣人が、お金が足りなくて夜、働こうとする女の子にどっさりと札束を渡しながら言った台詞。
金はいくらあっても足りない、底なしに欲しくなる。
承認欲求も同じだ。
最初は何もなくて良かったのに、いいね一つが嬉しくなり、コメントが嬉しくなり、いいねとコメントなしでは満足できなくなる。しかも一つじゃ足りなくて。
いつまで経っても足りることなんてない。
足りることなんてないのに、ずっとずっと欲しくなってしまう。
だっていいねがもらえた時は言いようのない幸福感に包まれる。コメントなんて、舞い上がってしまうほど。
よくない循環だと思う。
まるで中毒だし、実際この欲求のおかげで私は無事スマホ中毒だ。
多分、自分の書いたものを誇っているからこそ出てくる感情なのはそうなのだろう。
いいものを書いたから見て欲しい。
自然な感情ではあるのかもしれない。
誇ることは別に悪いとは思わないのだが、この底なしの承認欲求だけはどうにかしたい。
じゃないといつか、本当に殺されてしまいそうで。
醜い私は嫌いだ。醜い感情も。
トーストを食べ終わる。お皿は空っぽだった。