虚無パスタが食べたくなった。
一日中パソコンに向かって、ようやく終着点にたどり着いた午前二時。
そろそろ寝たいけど、最近は全く持って寝付けないから何か腹に入れて眠ろうと思った。
生憎調理なしで食べられるような便利なものはうちにない。
どうしたものかと考えた時、浮かんできたのがこれだった。
虚無パスタとはYOUTUBEをあげているにゃんたこさんが作っていたパスタだ。
何も具の入っていない、いわゆる素パスタだ。
味付けがよく分からなかったので、久しぶりに動画を見ながらパスタを茹でる。
実は6パーセントのアルコールが入っているので茹で加減なんて適当だ。
いや、見栄を張った。いつも茹で加減なんて適当だった。
ぐつぐつ音を立てる湯にパスタを押し込めながら、「パスタが得意料理だという女性は自意識過剰」、だなんて遠い昔に知識として仕入れてしまった出鱈目な情報を思い出す。
大きくなったらパスタが得意料理とは言わないでおこう、と思った。
こうやって良くない物が色々と育てられていくんだと思う。
ゆで上がったパスタはもう面倒なのでボウルに入れる。
そこにバター、めんつゆ、鶏がらスープの素、胡椒だ。
完成。虚無パスタ。
素パスタは沢山食べたことがあるけれど、ちゃんと虚無パスタを虚無パスタとして食べるのは初めてだった。
アルコールと深夜に当てられた脳。
少しぐでったパスタにも、何だか濃い味が絡んでる!と喜んでくれる。
味がして美味しい、なんて至極頭の悪いことを考えたり。
寝る時間も食べる時間も本当にめちゃくちゃだ。
自分勝手でわがままで、とても心地が良い。
それでいて一応やりたいことはやれているのだから、この夏は100点満点だ。
ずっと続けばいいのに、と密かに想ったり。
起きていたい時に起きていればいいし、眠りたくなければ眠らなくてもいい。
本当に眠りたいときにはこうしてお腹を満たして、アルコールに頼って、薬をのんでしまえばどうにだってなる。
頭は勝手に動くけど、身体は結構従順になってくれる。思考回路はともかく、所詮生物としての構造は同じなのだ。
一か月後、二か月後がどうなっているかは分からないが、こうやって私は私の体をものにしていく。
酷く世間からは離れているけれど、これこそそもそものあるべき姿だとすら思う。
積み重なったワードの文字数を閉じて、最後の力で食器を洗う。
明日は少しだけ準備しなければならないことがある。
人と会う約束だけはすっぽかさないようにと、しっかり日付を確認してベッドに入るのだった。