食べ物と私

食べます。

大人の鯛茶漬け

久しぶりに友達と会った。

車で家まで迎えに来てくれる。やっぱり運転している姿を見ると大人だなと感じる。

 

車の中、懐かしい音楽が流れる。

中学時代、私達が一緒に演奏した音楽。

 

彼女とは小学校、中学校と仲良くしていた。

特に中学時代、私と彼女は吹奏楽部の副部長と部長をやっていた。

 

懐かしい時代だ。

まだ色々なことが未発達の中学生。本当に色々なことがあってちょっと大変だったけれど、まああの頃はあの頃で良かったのかな、なんて思う。

 

女同士の揉め事はちょっとレベルが高くなっただけで無くなりはしなかったけど、私達もきっとあの頃より、色々なもののあしらい方が上手くなった。

 

私のことはさておき、友達は本当に、すっかり大人になっていた。

会社のことを尋ねてみれば、曰く、諦めることがコツだと。

どうやら入社初日にそう教わったらしい。

大丈夫なのか心配になったが、そういうものとして割り切っているようだった。

何だか少し、距離を感じる。

 

それから車を走らせること数分。

目的のランチに着く。

開店して三十分も経っていないのに名物のレアかつは売り切れてしまっていた。

でも、私はこっちが食べたかったので鯛茶漬けを選ぶことにする。

 

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おひつからご飯を継ぐ形で、なんとなく一緒に食べている感じが強くなる。

鯛にお出汁をかけると、ぎゅっと身が小さくなってぷりぷりの食感が口の中に広がった。

どれから食べていいか分からなくてあちこちつついているうちに、ぽつぽつと話は弾んでいく。

 

今思えば、彼女と会ったのは二年ぶりな気がする。

これだけ長く会っていなかったのも会社の規定のおかげらしい。

 

大人になるとはなんだろうと思う。

 

私は色々なことを諦め切れなかったし、多分これからも諦められない。

むしろ今までは色々と我慢をしてきた方だと思う。

それが少し辛くなって、私は私として生きるようになった。

だからもしかしたら、どちらかというと今までの方が大人だった気がする。

 

でも、私はもう何も諦めたくないし、私を殺したくなかった。

 

どんどん社会から外れてしまっている気がする。

きっと在り方としては彼女の方が正しい、というか、真っ当なのだろう。

私は真っ当が苦しい。

 

おひつのご飯をお代わりする。

久しぶりに米を食べたと話す彼女は、何だか遠く、とても立派に思えてしまう。

 

半年後、私はどうなっているのだろうか。

数年後、私達はどうなっているのだろうか。

何でもいいし、どうでもいいけれど、私たちが幸せであればいい。