コメダ珈琲での作業地獄から見事生還し、私はそのままふらふらと『マクドナルド』に足を運んでいた。
極限の空腹にマクドナルドの看板は卑怯だ。重力並みに逆らえないものがある。
本当はCMで見かける月見バーガーがお目当てだった。色々と新商品を打ち出しているマックだが、その中で月見バーガーだけは毎年欠かさず食べているのだ、なぜか。
しかしクーポンを漁っている時に勘違いに気が付く。どうやら次の日が発売日だったらしい。これで期間中にも一度マックに足を運ぶことが確定してしまう。
今日は仕方なく私はベーコンレタスバーガーセットをお持ち帰りで注文した。
サイドはポテト、飲み物はバニラシェイクのS。コメダでアイスを食べたことなどすっかり忘れてしまっていた。
ポテトの熱でシェイクが溶けてしまわないか少しハラハラしつつも、限界を訴える空腹に急いで家に帰り、買ったものをテーブルに出す。ザ・ファストフードという感じだ。
何となくだが店内で食べるマックは日常的であるのに対して、家で食べるマックはご褒美というか、どこか打ち上げをしているような気分にさせられる。
小さな頃から数え切れないほど足を運んでいる、料金も安いファストフード店なのにご褒美感を得ることが出来るのは、なんだか不思議な話である。
何はともあれ、今日は正真正銘、作業終わりのご褒美である。
空腹に促されるまま、がぶがぶとバーガーとポテトをかっ食らう。ちょっと息が詰まりそうになるもそこにシェイクが冷たくて、少しほとぼりを冷ましてくれる。
暴力的にがっつくまま、お疲れさまと自分に声を掛けた。
ずっと変わらない強い美味しさ。無心で食べられる美味しさだ。
ハッピーセットを頼んでいた時期も、マックのセット一つじゃ物足りない時期もあった。今はもういっぱいいっぱいで、ポテトがお腹に来る時期だ。
頼む定番のバーガーも、チーズバーガー、照り焼きバーガー、ベーコンレタスバーガーと、知らない内に移り変わっていた。
私は変わっていくけど、マックの謎の特別感はそのまんま。
きっとこれ以上歳を重ねても変わらないのだろうな、と思う。
そうだ、特別感の理由は一つある、と最後のポテトをつまみながら思う。
お腹いっぱいになりすぎるバーガーセット。大量の幸せと共にガツンと摂取することになる糖質。
食べた後はしばらく放心して使い物にならなくなるのだった、私は。
早速運ばれてきた眠気に苛まれながら、私はどうにか塩で汚れた手を洗いにキッチンへと向かった。