数日前から、無性にプリンが食べたかった。
真夜中、コンビニのプリンと対峙する。
何か特定のものが食べたくなったのは、随分と久しぶりのことのような気がした。
同窓会に誘われている。
高校の部活の、いわゆるOB会だろうか。
もうそんな時期だなあと思うと同時に、色々なことが頭を巡る。
部活の、一つ上の先輩。
私は彼女と折り合いが悪かった。
今、比較的静かに暮らせている私だが、だからこそ彼女に会ってやりたいという欲がある。
会ってやりたいと思ってる時点で、きっと同窓会に行くべきではないのだということも、私は分かっていた。
渦中にあった時期からは、もう十年が経とうとしている。
時間が時間なだけ、それなりに折り合いはつけてきたのだとは思う。
たとえば彼女のSNSを覗かなくなったとか、やり返す想像をそこまでしなくなったとか。
それでも、いまだに私は彼女のことを見返したいのだと思う。
十五歳の、たった一年間の話だ。
もういい大人なのに、しがみついて滑稽だとは思う。
滑稽だけれど、これから先、どれくらいこの思いが薄まっていくかは正直分からない。
もしかしたらずっと、私は彼女のことをどこかで憎んだままなのかもしれない。
それもきっと、悪いことではないのだと思う。
人前で貶されたり、挨拶を無視され続けたことは消えない。
彼女が保育士になるための大学に推薦で合格した時、私がこの世を少し諦めたことも、この先一生変わることのない事実だ。
それでも、薄暗い感情に振り回されるといい結果にならないことを、私は知っている。
虚栄心、顕示欲、優越感。
そういう、人間の嫌な感情が出ることは自然なことだ。と、少なくとも私はそう思っている。
そこに振り回されなかったから人間の格が上がるとか、そんなこともきっとない。
ただ、衝動的な感情と根付いた気持ちを分けることは、自分を大切にすることに当てはまるとは思うのだ。
私も人間だ。
彼女と同じような性質を兼ね備えているし、被害者面をするつもりはない。
それでも私は人間だから、許せない私のことを認めたいし、できるだけ消耗しないよう、自分を助けてあげたい。
プラスチックのスプーンでプリンを掬う。
冷たい部屋に冷たい甘さ。
少し寒いけれど、苦さのあるカラメルが程よく舌で溶けてくれる。
小さく小さく諦め続けてきた世の中は、もうどうしようもないところまで来ている。
けれど、食べているプリンは美味しい。
今、私は自分の食べたいものをちゃんと聞いて、きちんと自分に食べさせてやることができている。
きっと私はそれで十分、よくやっている。よくやっているよ。
彼女の話ばかりになってしまったが、他のみんなは元気かなと思う。
きっと今年は会えないけれど、せめてそれぞれが幸せであればいい。