食べ物と私

食べます。

レジ横の肉まん

私は「今だけ!」に、弱い。

期間限定のメニュー、夏のお得セール、そして今だけ100円の肉まん。

 

ぐるぐると鳴く腹を抱えながらたどり着いたコンビニで、あの冬の顔を、しかも100円で私は見つけてしまったのだ。

遅い昼食は一瞬で決まった。

 

レジ横。あの領域は何故あんなにも魅惑的なのだろうと思う。

美人はレジ横のホットスナックを買わないと、ツイッターか何かで見た記憶がある。

「美人、もったいね~」と、その時心底私はそう思った。

 

王道のチキンに、ほんのり甘いアメリカンドック。タレが嬉しい焼き鳥、フライドポテトと、変わり種のいももちやつくね串。

 

買うつもりがなくても、いつの間にか口が動いている。そもそも目で追ってしまっている時点できっと私は負けているのだろうけど。

どうしてもじっくり選びたくて、店員さんに気付かれないよう、スナイパーよろしく遠目で吟味する時すらある。

レジ横はあらゆる意味で私を惑わしてくるのだ(ちなみに私の愛するヴィレッジヴァンガードではその位置をゴキブリのおもちゃが占めている)。

 

その中でも、コンビニの肉まんは温かさの代名詞だと思う。

まっしろでぷりっとした、可愛らしいフォルム。

決して満足感が強いわけでもないし、物理的な温度で言ってもそう高くはない。

それでもあのふわふわの中には、どれだけ生姜入りのスープや熱々おでんだって敵わない、優しい温かさが秘められている。

 

あれ、もしかして、もう夏終わる?

 

安定しない天気、微妙な気温と強い湿気の蔓延る部屋の中で、そんなあったかい質量を手にしながら、私はぼんやりとそう思った。

私の思い違いでなければ、夏の間肉まんは売り出されていないはずなのだ。

それが出ていて、しかも100円セール中。

今年、私の夏の終わりを告げる役割を担ったのは、どうやら肉まんだったようだ。

 

雨の多い夏だったな、と早くも終わった気になりつつも、ほろほろとした具と弾力のある生地を大口で頬張る。

肉まんなんてきっと食べ歩きを前提として作られたようなものなのだろうが、少し恥ずかしくて、私はいつも家に持ち帰ってから封を開ける。

このご時世なので憚られるのは一旦置いといて、いつか堂々と肉まん片手に街を闊歩出来るくらいの度量をつけたい。

 

そして肉まんと言えば、私の地元ではからしと、あと酢醬油が当たり前のような顔をしてくっついてきていた。

からしはまだしも酢醬油はサラサラで、掛ける配分が難しかったことを覚えている。

引越しをしてからは見かけなくなってしまい、少し寂しいなと思う。今度買うときは、自分で用意してみるのもアリかもしれない。

 

おでん……は、多分まだコンビニになかったはずだ。

肉まんが夏の終わりなら、おでんがきっと冬の始まりを告げてくれるはずだ。

私の四季は食でしかないのかと呆れつつも、これじゃ美人にはなれないなー、と笑ってやるのだった。

 

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