新学期の足音が聞こえ始めてから、とんとコンビニ飯が多くなっているような気がする。
もちほんコンビニのご飯も美味しいが、いかんせん値が張る。学生の財布は寂しいのだ。
スーパーへ行こうにも、なんやかんやと動いていたら外は暗くなっていた。
日が落ちるスピードもどんどん早くなっているような。
仕方ないと私は冷蔵庫を開け、一人暮らしの必需品、パスタを取り出した。
九月と、それから四月。
一年の中で最も落ち着かない時期だと思う。
色々なことが始まって日常が定まらないような、そんな時期。いつも地に足がつかないような感覚に陥る。
ドタバタとした雰囲気に呑まれて、食事ですら蔑ろにしてしまいがちではあるが、この雰囲気に当てられることも、生きていく上での一種の儀式なのだろう。
新しいことが苦手な私としてはあまり好きではないが、少しの辛抱だ。慣れるまで、慣れるまで。
冷蔵庫にはにんじん。これだけじゃどうにもならないので、奥義である冷凍庫を開ける。
ブロッコリーと、えのき。そしてウィンナー。
何とかなりそうだった。
パスタを茹でている間に、ブロッコリーとえのきはそのまま、にんじんとウィンナーを切っていく。
薄く切ったにんじんをバターでソテーにする。バターで焼けば大概のものは美味しくなると、私は勝手にそう思っている。
にんじんを引き上げたらフライパンはそのまま、オリーブオイルを追加して凍ったブロッコリー、ウィンナー、えのきを入れる。
ブロッコリーは少し硬い方が好みなのだが、冷凍品だ。水分が抜けて柔らかくなってしまうのはまぁ仕方ないだろう。
それにしても結構水分が出てしまったな、と思いつつ、そこに茹で上がったパスタを投入。
味付けはどうしようと迷った後、顆粒の和風出汁、醤油をかけ、気付く。
あれ、私オリーブオイルとバター入れなかった?
洋風にしたかったのか、和風にしたかったのか。
何ともブレブレのチョイスである。
そもそも具材たちがあやふやなのが悪いのだ。定まらない。
どうせならごま油で炒めればよかったと思いつつ、にんじんを添え、胡椒を振りかけたら完成である。
なんとも雑なパスタに仕上がった。
部屋の汚れは心の汚れ、とはよく言うが、料理だって大概精神状態を現しているんじゃないかと思う。
いや、掃除と料理は顕著なだけで、きっとあらゆることが気持ちと比例しているのだろう。
それほどに心は重要なのだ。
でっかい具材にどうにかパスタを絡めとり、食べる。
まぁ、味は可もなく不可もなくと言う感じだ。
これを出されて喜びはしないが、残しもしないだろうというような。
ちょっとしんどい時期だ。
探り探り、少しずつ馴染んでいく、そんな感覚。
でも人間は案外すぐに慣れてしまう。
私だって人間として二十数年間生きてきたのだ。今回もきっとどうにかなる。
そして色々開けた頃にはきっと、今日よりも味の定まったパスタが出来上がるのだろう。
お皿を洗いつつ、そうやってまだ見ぬパスタに想いを馳せる私なのだった。