食べ物と私

食べます。

脳へのご褒美マリトッツォ

夕刻。暗くなってきた道の中。

私はコンビニへ向かっていた。

 

午後四時、五時。

このあたりの時間は、コンビニのためだけに外出することが多くなった気がする。

丁度、集中力が途切れてしまう時間帯なのだ。

いわゆる、糖分補給タイムである。

最寄りのコンビニまで徒歩で往復一時間半かかっていた実家では考えられないことだ。

 

三分くらいで店に着き、自動ドアをくぐる。

ショートボブの店員さんはこの時間の担当なのか、よく見かける。そしてよく髪色が変わっている。

ちなみに引っ越す前の最寄りのコンビニには、ちょっとこちらが心配になってしまうようなおじいさんがいた。

 

少し悩みつつ、小さな店内を練り歩く。

絶対に必要なものはエナジードリンク、もしくは甘いもの。

 

エナジードリンクを買った時には、大体レジ横のホットスナックを一緒に買う。

甘いものは単体、もしくはブラックコーヒーを買う。

どちらにせよ不健康だ。まあ、仕方がない。

とりあえずスイーツの棚を見てみることにする。

ぐるりと輪になっているスイーツの棚。その新商品のコーナー。

おや、と、私は足を止めた。

 

そこにあったのはティラミス味のマリトッツォ。

マリトッツォ、マリトッツォ。

 

なんだか最近人気のスイーツだ。いや。もうブームの頂点は過ぎてしまったか。

マリトッツォがどのようなものかよく分からないまま、何となく手を出さずにただ眺めるだけに落ち着いていた。

オレンジピールが入っていると風の噂で聞いたせいか、私にしては珍しく、流行っているというのにそこまで惹かれなかったのだ。

 

ただ、目の前にあるこれはティラミス味。そして、シフォンケーキ風ときている。

ティラミスは元々好物な上に、近年は推しによるフィルターまでかかってしまった。

シフォンケーキに生クリームが合わないはずもない。

 

そんなこんなで、私の初マトリッツォはこいつに決まった。

家に帰り、さっそく開封する。

ちなみにブラックコーヒーは買わなかった。

 

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何とも可愛らしい見た目である。ちょっとどら焼きに見えなくもない。

大きく口を開けて頬張れば、ふあん、と生地が沈んだ。

それからほろ苦いクリームと、隠れていたマスカルポーネチーズのコクが口いっぱいに広がる。

 

果たしてこれをマリトッツォと言っていいのかどうかは分からないが、ともかく美味しい。私は好きだ。

 

じわりじわりと脳に浸透していく糖分に、少し心が落ち着いていく。

視界が前より明るいような。

少しブルーライトを避けるだけで、きっと十分な気分転換になったのだろう。

 

ゴミを片付けてから、再びパソコンに向かう。

書きたくない時は本当にやる気が出ない。指すら思う、全力で心が拒否してくるのが分かる。

 

美味しかったから、ね?

 

まだ若干駄々をこねている私をそう言って宥めて、また私はキーボードを叩くのだった。