食べ物と私

食べます。

冷たい私とキャンベルスープ

昨夜の酒で胃が荒れている朝。

水を飲むだけで、胃がきゅうと小さく鳴るのが分かる。

ついでにデジタル時計についている温度計は10℃をさしている。

 

こんな朝には、温かいものが一番だ。

 

とは言えやる気は出ず、秘蔵の缶詰コーナーから赤い感を取り出した。

キャンベルスープ』。スープの素、のようなものである。

 

この缶がなぜうちにあるのか、私はよく知らない。

買った記憶はないので、多分仕送りの中にあったのだろう。ちょっと覚えていないが。

 

作り方を確認し、固まったホワイトソースを鍋に空ける。

そして空っぽになった缶一杯分の牛乳を、ゆっくりとホワイトソースに絡めていく。

なんともかわいい作り方だ。

 

最近はどうにも気分が良くない。

特にブログを書くようになってから、一記事にかかる時間でその時の自分の調子が分かるようになってきたと思う。

 

活発な時は三十分もかからずに、どうにも良くない時は一時間以上。

反対にとびきり調子が悪いときは、かなり早く書き上がったり。

 

最近は長く時間がかかることが多くて駄目だな、と思う。

時間のかかった記事にはやはりまとまりがない。散らばっている。

 

雑記なのでクオリティもなにもないのだが、書けない時は自分が空っぽな感じがして、少し嫌になってしまう。悲しくなってしまう。

記せない、というのは私が思うよりどうやら致命的で。

 

でもまあ、こういう澱は、全部季節の変わり目と寒さのせいにしてしまおう。

してしまいたい。

 

スープから湯気が立つ。こちらはどうやら温まったようだった。

 

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トーストと一緒に食卓に並べる。

ちょっと特別感を出すために、パセリなんか振ったりして。

 

スプーンの上で少し冷ましてから、口をつける。

途端に広がる、海鮮の旨味。入っている具材が何なのかはよく分からないが、かなり出汁が効いている。

煮崩れのないじゃがいもも美味しい。

スープにパンを浸してみれば、これまた優しい朝の味。

じゅわりと温かさが胸に染みていく。

 

ひとつひとつ、きちんと食事を取る。

眠れるし、やらないといけないことは、なんとなく出来ているような。

それでも、取るに足らない小さな幸福は、寒さの前で幾度となく消えてしまう。

 

生まれてから、何度目かの冬。冷たさ。

 

毎年めぐるこの時期に打ち勝てるほどの武器を、私はいつも持てずにいる。

体だけはずっと、いや、きっと心も健康なのだ。

ただ健やかな暗闇に向かい合う術が分からないだけ。

ただありのままの冷たさで、声を出すことが億劫なだけ。

 

あと何度、この寒さを乗り切らなけらばいけないのだろう。

このスープはあと何度、私を温められるのだろう。

 

ちょっと良くない頭と心。

食べ終わったお皿を割りたくなってしまうような。

 

鍋にはまだ、スープが残っている。