とことんぼろぼろになった日。
ついてないとしか言いようのないことが起きた。本当に本当についてない。
しかも、問題だけは起こさないことが取り柄であった私を脅かすような事態になってしまった。最悪だ。
人からの信頼を失うことを、私は誰よりも恐れている。
要領の悪くてビビりな私はいつだって危ない橋を渡らないよう、小さくコツコツとゴールを目指す。というか、そうするしかない。
私だって出来ることならウサギみたいにピュンと飛んで、途中で休憩してみたい。
でもそうはいかないから、亀のように休まずに進むしかない。
昔話では亀が英雄みたいに描かれているけど、現実じゃそうはいかない。
行動が早いに越したことはないし、休憩したところでゴールは出来る。
勝ち負けを競っているわけじゃないのだ。
結果、少し遅いけど元気なウサギ、そして疲れ果てた亀が残るだけである。
やってられない。全く持ってやってられない。
500ml缶のビールと100円の生ハム。
なんとも言えないチョイスだが、私はこれ二つをコンビニで買って、黄緑色の春コート、その深いポケットに突っ込んで帰ってきたのだ。
プシュッといい音を立てて缶を開ける。
こういう時は全部全部流してしまうに限るのだ。
思いのほかずっしりとした缶を傾ければ、クリーミーで苦い微炭酸が喉を刺激する。
最近はこのビールがお気に入りだ。
カチカチとパソコンをいじりながら、割りばしで生ハムをつつく。
随分と久しぶりに食べたが、なんだか記憶よりも塩気が強いような。
これはお酒なしでは食べられないな、なんて救いようのないことを考えてみる。
少し湿度の高い部屋。
窓を開けてみると、真っ暗な夜に夏の足音が聞こえる。
ここ2週間くらい掃除機をかけていないような気がする。
滞った空気が夜の冷たさに馴染んでいく。部屋が透明になっていくような。
私のマンションは壁が薄い。
隣から聞こえる声は女性のような気がする。4月から新しく越してきた人だ。
色々なことが変わっていくと思う。
追い付けないうちにカレンダーは変わるし、服は袖を失くす。
ビールが心地いい気温になって、毛布を着なくなる。
動く、移ろう。
私の周りにいる人も、私の気持ちも。
それは自然な事であり、何だか無意味な事のようにも思える。
こうやってふわふわと浮かぶまま、つかみどころのないまま、きっと気が付けば老いているんだろう。死んでいるんだろう。
必死にやったとして、何かを成し得たとして、やっぱり小さい。
美味しいものもアルコールも、浮遊の一つでしかないのだ。
きっと、疲れているんだと思う。
早く寝てしまおうと、座ったまま天井を仰ぎ見た。